—— 新しいアルバムのタイトル、『DIStopping』というのは、どういう意味ですか?
いつか “DIS”(批判)をトッピングしていくべきか、それともストップするかって意味で す。わたし自身、これまで、社会や人に対して疑問がわいたら、何かと文句を言ってきまし たけど、文句を言い続けても、それだけでは消化されないことに気づいたんですよね。「さぁ、この後はどうやって自分の中で消化していこうか」っていうところまでたどり着かないと、ディスる意味ってないんじゃないかなと。
—— なるほど。HP にも「余裕のない『DIS』はただの弱音」っていうキャッチコピーが ありましたけど、その通りだなと思いました。
いつか 今回のアルバムを作るのを通して、すごい感じたことなんですよ。自分自身がそうだなと。いろいろ言いたいことはあるけど、「結局、で、わたしはどうなの?」っていうことをこのアルバムを制作している途中から思っていて。結局、文句を言っているだけだと、自分の実にはなってないし、解決もしてないことを自覚しながら制作していましたね。
—— 今、世の中は、ディスであふれているじゃないですか。匿名で、SNS で、ディスるとか。でも、カリスマドットコムのディスにはメッセージがある。表現として正しくておもしろいディスならアリだし、刺さるんだなって改めて思ったんです。
いつか 嫌っている人もいると思いますけどね(笑)。たしかに、文句を言っていてもおもしろい人っていますよね。たぶん、その差異って自分に余裕があるかないかだと思う。匿名のSNS とかまさにそう。何言いたいのか分からないし、ユーモアもなくて八つ当たりにしかなっていない人って、余裕がないんだろうなって思う。そういうディスは吐きだしても、迷惑なだけだから、自分の中で処理したほうがいいですよ。
自撮り写真も「いいね!」ボタンの欲求もイタイと思う
—— 前作の中の「LIFE FULL」では、SNS 社会に流れる自意識の気持ち悪さについても歌っていましたけど、痛快でした。SNS の自己アピールって、ディスと同様。鬱屈としたモヤモヤやストレスの吐き出し口なのかなと。
いつか 自撮りの写真をSNS にアップするとか、「いいね!」を欲しがるとか、わたしにはさっぱりわけがわからんです(笑)。「いいね!」なんて表面的なものだから、心底の自信にはならないですよね。「かわいいからつき合ってよ」って言われるようなものですよ。 そんな上っ面な好かれ方をしたところで満たされるんですかね?
ゴンチ なんか悲しいね(笑)。
—— 女性は若さや美しさで測られがちだし、そういうものだという刷り込みもありますからね。可愛いみたいな表面的な評価でもいいから欲しくなるのかも。
いつか 可愛くなりたい気持ちは大切ですよ。でも、解釈とかやり方とかいろいろと間違っていると思う。だって、年をとれば毛穴は開くから(笑)。整形してどれだけ美しくなっても心の穴は埋められないですよ。もしも、わたしの友だちでそんな上っ面なものに振り回されている子がいたら、すぐにはっきり言っちゃう。自撮り写真をいっぱいアップして、「いいね!」ボタンなんてもらっても、意味がない。わたしはイタイし、キツいと思うよって ハッキリ言いますね。
—— 気持ちいいです(笑)。実際、そんな風に本音で付き合える女友だちを求めている人は多いと思うんです。最近、20 代 30 代の女性誌のテーマによくあがるのは、「本当の友だちってどういう風に作ればいいの?」という。
いつか 本音で話せる友だちがいない人って多いと思う。わたし、大学に行った時に思ったんです。うわっ面な話ばかりしているんだなって。毎日、「○○くん、カッコいい!」って話ばっかりしているから、お腹痛くなって(笑)。その後、別なクラスで同じように浮いているBガールと仲良くなりましたけど。
ゴンチ なかなか本音で話せる女友だちをつくるのは難しいよね。
—— でも、だからこそ。カリスマドットコムが必要なのかもしれないですよ。社会への不満をすくいとってくれたり、女子の弱さをズバリと指摘してくれたり、眠っていた反抗 心を覚醒させてくれたりする本音の音楽が。
いつか そうだとうれしいですけどねぇ。わたしの場合、もともとは歌詞を書く時も身近な人に向けているんですよ。世の中のみんなにモノ申すみたいな意識はあんまりなくて。友だちとか会社の同僚とか、身近な人と会話する中で、疑問に思うことが出てくると、ま ずは正面から話しあって解決しようとするんですけど、なかなか答えの出ないこともある。 そうすると、歌詞にしたくなるんです。だから、どんな歌詞も本音ではありますね。
問題の本質から逃げる人はカッコ悪い
—— では、先ほど話に出た「余裕なくディスってしまう人」たちはどうしたらいいんですかね?
いつか わたしも日々に追われて、余裕がなくなった時に思ったんですけど、やっぱり逃げずに一個一個自分で解決するしかないんだなと。問題の本質から逃げても、変なモヤモヤが溜まって行くだけで。溜まるからますます余裕がなくなっていく。
—— 本質から逃げていると、自分にウソつくようになりますよね。ゴミが溜まりすぎる と、見ないフリするように(笑)。
ゴンチ わたしはそう。モヤモヤは遮断して放置してしまいがちですけどね!(笑)。
いつか ねぇ(笑)。でも、すごく簡単なことでも、一番に傷つきたくないみたいなのが出ちゃって後回しにしていると、次のモヤモヤが来る。モヤが心に充満して、気がつけば、余裕がなくなっていく。だから一個づつでも、傷つくことを前提で片付ける、消化させる ことをやっていけば、心にちょっとだけでもスキマが生まれるじゃないですか。「あ、そういうことか」っていう納得とかプラスの感情も生まれるから。その作業を繰り返してやっていけば、余裕は生まれるんじゃないかなぁって思います。
さらなるインタビューが、dmenuの『IMAZINE』でつづいています。
「OLをやっているからこそ、リアルな怒りが描ける」Charisma.com
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執筆 芳麗、撮影 片村文人