どんな環境で育てられたんですか?
Q. 僕は写真を通して、ものの見方を少し変えるだけで、大きく世界が変わって見えるということを伝えたい気持ちがあるのね。そのために、自分でシチュエーションを作って撮影するスタイルを取っているんだけど、人生においても、例えば旅に出てみたりとか、自分でドラマチックなことを巻き起こすことで楽しもうとしているところがあるんだよね。でも、いちょこさん(※庸子さんの呼び名)には、もっと身近なところでそれを発見していく才能があると思うのね。それは家庭の環境や教育とも関係していると思うんだけど、その辺りの話から聞いてもいい?
庸子:象徴的な話をすると、小学校の時に友達の誕生日会があると、みんなプレゼントを買っていくじゃない。当時は、サンリオのキャラクターとかが人気があって、みんな親からお小遣いをもらってそれを買いに行くというのが女の子の中の常識だったの。当然私も同じように親にお小遣いをもらおうとすると、「自分で作ればいいじゃない」って言われるのね(笑)。そんなつまらないものを買ってもしようがないし、自分で絵とか描けばって。うちは両親が美大出身で芸術関係の仕事をしていて、家に画材とスケッチブックがいっぱいあったから、その時は紙芝居を作ることにしたのね。一生懸命うさぎの絵とかオリジナルの話を考えて作ってプレゼントしたんだけど、喜んでくれたのは友達じゃなくて、友達のお母さんだったの…。両親がケチなわけじゃなくて、お金で簡単に買えるものには気持ちがこもっていないってよく言われてきた。自分の手で作り出して贈るという教えは一貫してたなぁ。
Q. いちょこさんと付き合い始めた頃に、僕の父親が倒れて実家に戻って、精神的に相当しんどい時に、「プチエネルギー7日間入り」って書かれた封筒をくれたじゃない。そこには色んなミッションが書かれていて、それを一日一枚ずつ開けるんだけど、それが楽しみで全部真面目にやってたんだよね。それこそ「愛してる」とかそういうことが書いてあってもいいものだけど、「植物を魅力的に撮って写メールで私に送る」とか、内容もやっぱりいちょこさんぽくて。付け焼刃じゃ絶対できないような、育まれてきた石井庸子の中枢みたいなものがそこにはあるんだろうね。正直そこに惹かれてたりするんだよね。
庸子さんが裕企さんに渡した「プチエネルギー7日間入り」。
庸子:子どもの頃、長野に親戚の山荘がある関係で、夏休みは両親と一緒にそこで1ヶ月くらい過ごすのね。でも、周りに友達なんていないから、朝と夕方のNHK教育テレビだけを楽しみにしてたりした。時間だけはたくさんあったから、ある日は、「今日はトンボを100匹以上捕まえよう」と思いついて、虫カゴにぎっしりトンボを入れて帰ったことがあるんだけど、「トンボが可哀想でしょ!」って親にスゴく怒られた(笑)。こんな感じで昔から、何もないところや目の前にあるものから何かを発想するという環境で育ってきたんだよね。
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