科学で人を進化させる?—SRシステム体験 vol.3

過去の現実を、現在知覚している現実に流し込むことで、体験者の“リアル”を操作する「SRシステム」。「瞑想」や「幽体離脱」といった、これまで科学では説明がつかないとされていた超自然現象のメカニズムも、SRシステムを活用して解明することもできるかもしれません。興味しんしんの海猫沢めろんさんが、研究責任者の藤井直敬さんに、SRの未来を聞いていきます。

 

「幽体離脱」は科学で実現できる

SRを使って「主観の共有」ができることはわかりました。

でも、ぼくはさらに面白いことができるらしいことを聞いていました—「幽体離脱」です。

海猫沢めろん(以下、めろん) SRを使って幽体離脱ができる、と書いてあったのを読んだのですが……本当ですか?

藤井直敬(以下、藤井) 幽体離脱はSRシステムを使えば簡単にできます。さっきめろんさんに見てもらった映像は、カメラで過去に撮った同じ視点からの過去の映像だったけど、カメラをそのへんに置いてそのライブ映像を見せると、自分がそっちに行って自由に見渡せるので自分の視点がそっちに移っちゃうんですよね。

めろん 視点が移る、ってどういうことなんですか?

藤井 自分の身体は元の場所にあるけど、視点からは自分が見えるから、分離しちゃうんですよ。カメラの位置を何カ所かに動かしていくと、自分ではない別のところに自分の視点がもってかれたまんまになっちゃって、それをずっと繰り返していると、部屋に自分が充満したような気になってしまう。神っぽい視点になってしまうんです。

SRシステムをつけて見ている風景には、コンマ数秒のズレがあります。このズレによって、最初に言った身体感覚のズレが起きるのです。

ズレが大きくなれば、たしかに感覚は身体を離れるだろう……けれど、こればかりはやはり体験してみないとわかりません。

めろん ロボットにカメラを搭載して原発を調べたり、紛争地帯なんかの危険な場所を遠隔カメラで調査する「テレ・エグジステンス(遠隔臨場感)」という技術がありますが、それとはどう違うんですか?

藤井 テレ・エグジステンスとSRは似ているようで違うんです。遠隔操作の場合は主体がずれる感覚は生じるけど、普遍的に自分が空間に遍在するような感覚は得られない。これは視点の数の問題です。テレ・エグジステンスでは、通常自分と遠隔地は1対1で繫がっている。一方、SRで自分自身を見る場合は色々な場所にカメラを動かして、異なる視点から自分自身を見る。それが自己の空間位置をあいまいにして錯覚を起こす要因になっている。
 人はまず、見えているものが自分か、自分以外かということを判断するので、動かしている身体感覚が“ここ”にあるのに、見えているものの遅れが大きい場合、「あれは俺じゃない」と判断してしまう。身体感覚と脳の認識を同期できないんです。薬をやるとか、死にかけるとか、脳を刺激するなどのときによく聞く幽体離脱体験は、部屋をパノラマで見るというものですが、SRの場合は自分の姿も見てしまうというわけです。

幽体離脱しつつ、ドッペルゲンガーも見てしまうというのは現実ではなかなか有り得ないことですが、それが体験できるというのは貴重です(体験のチャンスを逃してしまったのが悔やまれる……)。

藤井 あと、幽体離脱ではないんですが、最近おもしろいなと思うことがあって。誰かと握手している映像を見せながら、映像と自分の動きをシンクロさせてすっと手を差し出すんです。すると誰とも手をつないでないのになんとなくつないでいる気がする。
 ほかにも、猫の首をゴロゴロさせる映像で同じような実験をすると、8割くらいの人がもふもふした感じがすると言う。つまり、視覚で触覚も補填されるんです。

これは脳科学の本でよく書かれていることですが、人間はふだん、そのままの現実ではなく、自分の中のデータを見ているだけらしいのです。

たとえば風景を見るとき、それが初めて見るものの場合はデータのインプットに時間がかかります。

だけど二度目は以前のデータを読み込むので、認識が早くなります。

つまりほとんどの場合、ぼくたちは以前読み込んだ脳内データを見ているということになるのです。

これに関連した話を、以前、アイソレーションタンクのオーナーさんに聞いたことがあります。

「タンクに入っていたときに何か不思議なことはありましたか?」

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“すこしふしぎ”な科学ルポ

海猫沢めろん

漫画家・藤子不二雄氏はかつて、SFを「すこし・ふしぎ」の略だと言いました。そして現在。臨機応変に受け答えするSiri、人間と互角以上の勝負を展開する将棋ソフト、歌うバーチャルアイドル初音ミク、若い女性にしか見えないヒューマノイド……世...もっと読む

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