突然ですが、ご自分のことを指さしてみてください。
もしオフィスで、電車の中で、もしくはお料理やお洗濯の片手間にこの文章を読んでいるという場合、「自分のことを指さしている想像」をしてみてください。
どうですか? どの部分を指さしてますか?
実はこれ、日本では多くの人が「顔」を、欧米では多くの人が「胸」を指さすんだそうです。
どうしてでしょうね。
日本では他人にどう見られるかということで顔を意識し、欧米では自分がどう感じるかということで心臓を意識するんでしょうかね。
なんかアゴ指しちゃうわたしにはわかんないけど。
とにかく、自分の「心」「意識」みたいなもののありかを感じる場所は、人によって違うんですね。
わたしには文章の師匠がいますが、師匠は「自分の心のありかを下のほうに下げる」精神鍛錬をなさっているのだそうです。現代人はとにかく頭で考えがちだけれども、そうじゃなくてもっと腹で感じろ、心を深く下のほうに沈み込ませるんだ、と。
そうすると、頭で考えていては見えなくなるものが見えてくる。「自分」のことを指さす時も、顔や胸じゃなくって下腹部らへんを指すような意識になるかもしれません。
……あれ? それじゃあなんか、アソコに注目してほしい人みたいだな。
今日のテーマは、「心の性別」です。
人によって心があると思う部分が違うことからもわかるように、心というものは、なかなかとらえにくいものです。
ある心理学の教授は、心を学問するということをこんなふうに例えていました。「『心』が入っていることになっている暗黒の箱を、振ってみたり叩いてみたり、光を当てたり暗くしたりしてなんとか中身を知ろうとする試み」と。そのたびに音がしたり、一瞬ぎらりと光ったりはする。だけど、そういう反応を記録することはできても、「心」そのものを観察することはできない。そういうことなんだそうです。
「心」ってただでさえそれだけ謎なものですが、わたしたち日本語話者はわりとサラッと「心の性」とか「女心、男心」みたいなことを言いますね。さて、ここで、読者の方からの投稿をご紹介します。
こんにちは。牧村さん。cakesでの連載いつもとても楽しみに読んでいます。
私は38歳独身女性です。身体は女性ですが、心は100%女性なんだろうか? といつも疑問に思っています。考え方が男っぽいのです。TVとか見ていて男性目線で見ていることが多いです。綺麗な女性を見ると、この人ベッドでどんな顔してどんな声で喘ぐんだろう? とか想像しちゃうのです。
でも、恋愛対象は男性です。(FTMの人も含まれますが)女性のベッドシーンを想像するけど、自分がその女性とやりたいというわけではありません。
私は何なんでしょうか?
自分の中では私の心は51%女性で49%男性です、というのがしっくり来るかなぁ……と思っています。
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