【ハーレクイン豆知識:香り】
ハーレクイン小説では良く見かけるけれど、他の小説ではあまり見かけない表現……それが「アフターシェーブローションの香り」。作中ではセクシーな香りの表現として登場します。欧米諸国では、ヒゲを始めとする体毛は男性らしさの象徴と思われており、それを連想させるのが「アフターシェーブローションの香り」なのです。日本ではあまり理解できない感覚かも!?
【作品紹介】
離婚手続きのためにアテネへ来るように—— 3年間、別居中の夫に呼びつけられたイザベルは、 怒りと悲しみを胸に、愛する男と対峙した。 巨万の富を持つギリシアの億万長者。 そうとも知らずに恋に落ち、結婚した愚かなわたしは、 傷つき、自信も気力も失って家を飛び出した……。 噂によると、彼は次の妻にふさわしい女性を見つけたらしい。 ところが夫はイザベルを見るなり、 燃えるようなまなざしで告げた。「離婚はやめにする」
レアンドロスはローブをはぎとろうとでもいうようにイザベルのほうへ近づいていった。彼女の目の色が濃くなった。その意味はわかっている。彼女のことならなんでも知っている。
もうたくさん! イザベルの五感が叫び声をあげた。彼の手が伸びてくる。
レアンドロスは彼女の指をローブから引きはがし、タオル地に顔をうずめて匂いを嗅いだ。
「な、何をしているの?」
「ぼくのアフターシェイブ・ローションをローブにかけたかどうか調べているんだ」
レアンドロスは頭を上げた。
「きみの匂いしかしないな」
ため息をつき、さらに近づく。
「いいかげんにして帰ってちょうだい」イザベルは不機嫌な口調になった。
「嘘つきめ。ぼくにローブを脱がせてもらいたいくせに。着ているものをはぎとられ、ベッドに投げだされたいくせに!」
イザベルは震えだした。
「まるで脅しだわ」
「違う」
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