【ハーレクイン豆知識:プレゼント】
モテる男はプレゼントを欠かしません。ハーレクインヒーローは女性へ贈り物を送るのが大好き! 定番のプレゼントは花束、指輪、洋服…等ですが、変わったところではお城、自作の歌、下着、セクシーガウン、異国の言葉(直前まで集中レッスンを受けて話せるようになった)、実親との対面をプレゼントしたヒーローも。
『マイ・スイートガール』から、ヒーローがヒロインにとっておきのプレゼントを贈るシーンをご紹介です。
【作品紹介】
病室に現れたクィンを見てマライアは息をのんだ。彼に会うのは実に3年ぶり ——遠い戦時下の異国で出逢った二人は、かつて体を重ねる仲だった。とはいえその行為は軍に属するクィンにとって、死と隣り合わせの日々からつかのま目を背ける手段。そうわかっていたマライアは愛を打ち明けられず、やがてクィンの突然の帰国で音信不通になっていたのだ。クィンは知人にマライアが怪我を負い帰国したと聞いたらしく、身寄りのない彼女を自宅に連れ帰るため迎えに来たという。最愛の人との思いがけない再会に心乱れるマライアだが……。
ジェイムズが車から降りて手を振った。何か箱のようなものを抱えている。
モーゼがデッキから飛びおりてトラックへ走っていき、しきりにタイヤの匂いを嗅ぎだした。
「よう、クィン! おまえが拾ってきたちび、だいぶ太ってきたな」
「ああ、よく食うからね。食えば太るのは世の道理だ」
大食いの兄に、クィンは澄まして答えた。
「そりゃそうだ。ほら、今日は郵便配達人として来たんだ」
クィンの意識が荷物に向いた。
「ぼくが注文した品だ。マライアを驚かせようと思って」
ラベルを見て有名デパートの名に気づいたジェイムズは、にやりと笑った。
「こりゃあ、彼女、喜ぶだろうな」
その大声にクィンは眉をひそめた。
「頼むからもうちょっと大きな声でしゃべってくれないか。きっとマライアに聞こえていないと思うんだ」
さすがのジェイムズも申し訳なさそうな顔になった。
「うっかりしてたよ。悪い、悪い」
クィンは兄の頭を小突く真似をして、荷物を取りあげた。
「どじだな、まったく」
くそったれと言われなかったことにほっとして、ジェイムズはまたにこにこと笑った。そしてマライアが出てくると、手を振って彼女のほうへ歩きだした。
すかさずモーゼが走ってきて、ジェイムズの前に立ちふさがるようにして吠え立てた。
「うわ!ずいぶん優秀な番犬を飼ってるな、マライア」
「モーゼ、お座り」
マライアが言うと、子犬はさっと座って口の横から舌を垂らした。
まるで笑っているような顔だった。
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