華がある。アイコンの匂いがする。そこにポップセンスがある。
いまロンドンでお洒落でソウルフルな音楽がどんどん生まれている。
イラスト:長尾謙一郎
柴那典の2曲目→「センスレス・ワンダー」ヒトリエ
「センスレスワンダー」ヒトリエ
2014/01/18UP 268,963play(2014/5)
柴那典(以下、柴) つづいて僕がオススメしたいのは、ヒトリエというバンドの「センスレスワンダー」という曲です。
大谷さんもいろんなところで言ってきたと思うんですが、ロックフェスに出るような今の日本の若手ロックバンドって、どんどん曲のテンポが高速化している傾向があるんですよね。僕はこのバンドの首謀者であるwowakaという人が、その源流の一つだと思っているんです。彼はもともとボカロPをやっていて。
大谷ノブ彦(以下、大谷) あ! そうだ! そこからバンドを結成したんですよね。
柴 そうそう。もともとボーカロイドのシーンで、そういうテンポの速い曲で注目を集めていた人なんです。でも、ナンバーガールに影響を受けていたし、ボカロだけでなくバンドをやりたくなった。そこで、ニコ動の「演奏してみた」のカテゴリで活躍していた演奏のうまいプレイヤーを集めて結成した。
大谷 なるほど。
柴 なので、僕は彼は、ボカロとロックがここ数年で交わってきた流れの“鬼っ子”だと思っていて。今の若い世代のロックバンドとは違う成り立ちのバンドだし、4〜5年前からそういうタイプの曲を作っていたので、いわばそのパイオニアなんです。そういう意味もあって、彼らはこの先の伸びしろが全然違うと思います。
大谷 いろんなバンドと対バンやってるんですか?
柴 ようやく増えてきたところですね。こないだはリキッドルームでワンマンもやってました。
大谷 いやあ、これはおもしろいなあ。ライブに来てる子たちはボカロP時代のファンなんですかね?
柴 半々だと思います。だからライブに慣れてない感じもあるけれど、むしろ衝動同士でぶつかり合ってるみたいな感じがある。
大谷 なるほど。ヒトリエというバンドが、部屋で音楽を聴いてた子たちをライブハウスにまで足を運ばせたという物語が生まれている。
柴 そうですね。まさにそれが起きつつある。
大谷 ほんと、今はそういう時代になってきた気がしますね。後で米津玄師の話をしたいんですけれど、それも含めて、ボカロで曲を作っていた人たちが、ドアを開けて外の世界に足を踏み出ている。そういう象徴的なバンドになるかもしれないですね。
大谷ノブ彦の3曲目→「The Wheel」SOHN
「The Wheel」SOHN
2012/11/06UP 572,457play(2014/5)
大谷 次はグッとテンポ落とした曲なんですけど、僕がオススメしたいのはSOHN(ソン)ですね。「The Wheel」。
柴 これはどういうところが?
大谷 僕は今ロックDJをやってるんですけど、そこでいくつか感じている問題の一つに、今のアメリカとかイギリスの主流になってきている、いわゆるインディーR&Bにまったくついていけてないということがある。
要は、今の若い邦楽ロックファンに、ジェイムス・ブレイクをなかったことにしてるリスナーがすごく多い。ロックDJの現場だと、ひたすらアゲないといけないから、そういう曲がなかなかかけられないんですよ。
柴 そうなんですね。ということは、ジェイムス・ブレイクだけの問題じゃない。
大谷 アデルとか、ロードの「ロイヤルズ」とか、ああいうタイプの曲もそうですね。DJの時にいちいち断ってかけてたんですよ。「今、世界で一番売れてる曲をかけますよ」って。そうやって客にプレッシャーを与えてかける。
「Royals」Lorde
柴 そうするとちゃんと盛り上がるんですか?
大谷 そう。やっぱり、今は音楽の幅をどんどん広げていきたいと思うんですよ。「音楽が楽しい」ってもっと思いたいなら、やっぱり今は海外のインディー・ロック、インディーR&Bを聴かんでどうするの?って思う。その中での自分の好みが、SOHNなんですよね。
あと、サム・スミス。これは今の洋楽の一番美味しいところだと思うな。