膝がガクガクと震えて、満員電車にはもう乗っていられなかった。
目まいをこらえて電車から降りると、駅のベンチに座り込んだ。ここからまだ会社まで40分。しばらくするとホームに次の急行が入ってきたが、僕は立ち上がることさえできなかった。何本かの電車を見送った後、やっとの思いで比較的空いている鈍行に乗り込み、シートへと身を沈めた。
それまでも会社に行きたくない日は何度もあった。でも、こんなふうに電車に乗っていられなくなったのは初めてだった。いったい僕に、何が起きているのだろう? 間違いなく何か異変が起きていて、それは体の病ではないみたいだった。
しばらくして、僕は生まれて初めて精神科の外来を訪れた。待合室は、座る場所がないほど人で溢れていた。なんだってこんなに病んだ人がいるのか……。そしてどうやら、僕なんて一番軽い部類のようなのだ。下を向いたままずっと何やら呟いている人。ぐったりとしたまま動けない人などなど。僕の診察なんてモノの3分で、薬が処方されておしまいだった。
心を病む人が増えた
90年以降、世の中は心を病む人でいっぱいです。
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