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note - 賞味期限切れニュース余録
2014年5月2週目の主なできごと
・直木賞作家の渡辺淳一さん死去 代表作に「失楽園」(5月5日)
・スイセンをニラと間違え食中毒 女性5人、河川敷で採取(5月6日)
・「美味しんぼ」の表現で抗議 福島・双葉町、小学館に(5月7日)
・3Dプリンターで銃自作か 大学職員を所持容疑で逮捕(5月8日)
・ダル「逃した数で伝説に」 またも9回2死で大記録失敗(5月10日)
感動物語の皮を被った学校教育批判
速水健朗(以下、速水) 今回はビリギャルの話しようか?
おぐらりゅうじ(以下、おぐら) だいぶ売れてるみたいですね。僕は読んでないですけど、あの表紙の子は合格した本人じゃないんですよね?
学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話
速水 違う違う、あのギャルはモデルの子。まあ表紙で売れてるんじゃないか説もあるけど、本人もはあちゅうのブログとかでは顔出ししていて、普通にかわいいよ。そもそも本を書いたのは合格したギャルじゃなくて、著者は塾の先生だから。
おぐら たしかに著者名はちゃんと男の名前で「坪田信貴」とは書いてありますけど、表紙のギャルは別人で、著者もギャルじゃないっていうのは、パッと見で二段階の誤解を生んでますよ。
速水 そうは言っても、実際に30万部以上売れてるわけだからね。で、ちょっと前に朝日で書評を書いたから読んだのよ。本の内容はタイトルの通り「バカなギャルが頑張って慶応に合格した話」なんだけど、あれはもう塾のタイアップ。
おぐら え、塾の宣伝のための本なんですか?
速水 うん。だってこの子のお母さんが100万円以上もの授業料を払うシーンが出てくる。その時点で僕は「えっ?」って思うんだけど、これ読んで感動してる人はそれに納得させられちゃうわけでしょ。それととにかく著者の先生の思想がものすごく入っている本で。著者はすぐに子供の夢をバカにするような大人と社会と学校教育をめちゃくちゃ批判してるわけ。
おぐら 学校の先生と思想的に対立する塾の先生は一定数いますよね。
速水 本にも学校の先生とは対立してるって書いてある。多くの人はこの本を、学校の先生に「おまえが慶応なんて絶対に受かるわけない」って言われたギャルが悔しくて奮闘して合格を勝ち取った話として読んで感動してると思うんだけど、実際は学校教育を批判することで塾の素晴らしさをアピールしてる本なのよ。
おぐら でもそれはそれでアリなんじゃないですか?
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