漫画『賭博黙示録 カイジ』とは?
自堕落な日々を過ごす主人公、伊藤開司(いとう・かいじ)。そのカイジが多額の借金を抱えたことをきっかけに「帝愛グループ」をはじめとする黒幕との戦いに挑んでいく大人気漫画。命がけのギャンブルを通じて、勝負師としての才能を発揮するカイジだが、その運命は果たして・・・。
(作者:福本伸行講談社『週刊ヤングマガジン』で1996年11月号~1999年36号まで連載された作品)
先日、ウェブの制作会社を経営している20代の若手起業家と話をする機会がありました。インターネットの世界はどんどん新しい技術やサービスが出てくるので、この業界の人は「とにかくまずやってみてから考える」という方が多い気がします。お話しすると、そのフットワークの軽さにまず圧倒されます。
その彼は今、少しだけ悩んでいると言いました。将来のことを考えると憂鬱になる。動きの早い業界なだけに、自分がいつまでついていけるかわからない。そんなことを話してくれました。
彼の気持ちはぼくもわかる気がします。先のことを考えると、人は不安になりがちです。けれど、そういう不安と隣り合わせの部分も含めて、仕事は楽しいのかもしれません。
以前、幻冬舎の見城社長と、サイバーエージェントの藤田社長が書いた『憂鬱でなければ、仕事じゃない』を読んで、まさにその通りだと感じました。
見城社長は、朝起きて、スケジュールに「憂鬱なこと」が3つ以上ないと、不安になるとおっしゃっています。「憂鬱でないこと」は、安心領域です。それは既にマスターした仕事で、比較的簡単にできるでしょう。
ただし、資本主義経済では、常に新しいライバルが現れ、常に新しい商品が生まれます。自分が画期的な商品を生み出して、儲けを出せたとしても、それはすぐにマネされ、自分の利益は減っていきます。つまり、その商品、そのビジネス自体が、どんどん小さくなっていき、どんどん仕事にならなくなっていくということです。
仕事に慣れ、「安心領域」にできたとしても、その安心領域自体が、小さくなっていきます。せっかく、新しい「安心」を手に入れても、手に入れた瞬間からどんどん小さくなっていく。ちょうどお湯の中に氷を入れるようなものです。
そうなると逆に今度は「安心領域が小さくなっていく不安」に悩むようになります。このままでは安心領域がなくなってしまう、どうしよう・・・という不安が膨らんでいくのです。
それに打ち勝つ方法はただひとつ。常に安心領域を拡大していくことです。言い方を変えると、常に不安とストレスを感じる仕事にチャレンジし、克服していくことです。
ビジネスにおいては、「停滞は退化」と言われます。自分では現状維持をしているつもりでも、周りがどんどん前進しているので、相対的に後退しているわけです。
「だとしたら、最初からがんばらなければいいのでは?」と考えるかもしれません。しかしそれは、「人間はいつか死ぬ。だったら、今日死んでも同じだから、死んじゃおう」と考えるのと一緒です。この社会で勝ち、評価されるためには、積み上げ続けなければいけません。安心領域は、築き続けなければいけないのです。
「今は困っていないから、がんばらなくていい」と考える人もいます。ですが、その考え方はすこし損です。なぜなら、実際に困ってから新しいチャレンジをするのと、まだ余裕があるうちに仕掛けるのとで、どっちが精神的に楽だと思いますか? 当然「余裕があるうち」ですね。
ぼくはカイジからそれを存分に教えてもらいました。追い詰められてからの勝負は本当につらいものです。「これがダメだったら、もう後がない」と感じた瞬間、体がこわばって冷静な判断ができなくなります。だからぼくたちは、まだ必死になる必要がない、という時期から準備しておくことが大切なのです。
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