青山裕企(以下、青山) どうも、初めまして。今日はよろしくお願いします。
tofubeats(以下、tofu) こちらこそよろしくお願いします。そう、実際にお会いするのは初めてですね。Skypeでの顔合わせはありましたけど、あのときは音声のみでしたし。
青山 僕は、tofubeatsさんにはずっと謎に包まれた人という印象を持っていたんですよ。顔も出してないイメージだったので「いったい何者なんだ?」っていう。
tofu 初期は顔隠してましたね。高校に通ってましたから。
青山 もちろん活動自体は知ってたし、僕は南波志帆さんが好きなので、「LOST DECADE feat. 南波志帆」を聴いてより興味を引かれたんです。tofubeatsさんは、僕とは一回り世代が違うのに、作られてる音楽にはどこか琴線に触れる、懐かしい感覚があるんですよ。でも正直、オファーを受けてくれるとは思いませんでした。だいたい謎に包まれた人って、ほら、なんか恐く見えるから(笑)。
tofu あはは! 僕はコンドームのCMの曲(インスパイラルS【G PROJECT】)も歌ってますよ(笑)。むしろ僕は、青山さんがこの映画の監督をされるって聞いてびっくりしましたよ。
青山 そうですか?
tofu 僕は昔からTumblrをやっているんですが、一時期青山さんの写真がものすごい勢いで流れてきて、そこからブログなどを拝読するようになったんです。『スクールガール・コンプレックス』が出たときも、中高男子校で6年間こじらせてきた僕の琴線に触れないはずがなく、即購入しまして。だけど、その青山さんの作風と「妹ちょ。(いもちょ)」が結びつかなかったというか……。
青山 「妹ちょ。」は、プロデューサーと僕の共通の知り合いである雑誌編集の方から「監督やりませんか?」と連絡を突然いただいたんですね。「妹をテーマにしたコミック原作で映画を……」って、なんかふわっとした感じで。
tofu 詳しくは教えてくれない(笑)。
青山 そう(笑)。ただ、絶対エッチな作品なんだろうなとは思いました。わかりますよね、そういう思惑って。
部屋でトッポ食べながら爆笑して観ました
tofu じゃあ原作はご存じなかったんですね。
青山 申し訳ないながら、僕は普段から全くコミックを読まないんです。ただ、「妹」という存在にはこだわりがあったというか、子供のころはずっと一人っ子だったので、妹ほしい願望はすごく強かったんですよ。tofubeatsさんは、主題歌プロデュースの話が来たときどう思いました?
tofu 僕は「妹ちょ。」のタイトルは知っていて、友達から「相当エロい」という評判も聞いてたんで、「マジか!」と。僕は深夜にやってるお色気ドラマとか、そういうドラマのテーマ曲が大好きなので、即決でしたね。過去に、主演のてんちむ(橋本甜歌)さんが参加された曲(「KAWAII GIRL」)の作詞作曲をしたという縁もありますし。
青山 tofubeatsさんは映画の完成前に、原作コミックと脚本から曲作りをされたわけですけど、苦労はなかったですか?
tofu 「妹ちょ。」は、かなりきわどい内容の作品じゃないですか。だから、「この脚本でR15に収まるの? ひょっとしたらR18になっちゃうじゃないか」みたいなことを考えてたんですよ。要するに、歌詞にお色気要素を盛っていいのかどうか、そのあたりのさじ加減が難しかったというのはあります。まあ、僕の気分みたいなものなので、苦労というほどではないですけど。
青山 そしてできあがったのが、「HOW’S IT GOING?」。この曲は甜歌さん演じる「神前美月(かんざきみつき)」というキャラクターが歌っているわけですけど、現実のアイドルの作詞をするのとは違いました?
tofu 僕は、作詞をするときは歌い手さんが言ってもイヤじゃない言葉かどうかをすごく気にするんですよ。現実のアイドルは何を考えてるかわからないので、ブログとか読みまくって本人にふさわしい詞を考えるんですけど、コミックのキャラは設定が決まってるぶんやりやすかったです。もっとも、僕はてんちむさんとも面識はあるので、彼女のことも多少は意識しつつ言葉選びした感じですね。曲も合わせてピュアな感じになったんじゃないかと思います。
青山 ほんとに、素晴らしい主題歌に仕上げてくださって、ありがたいです。
tofu いえいえとんでもない。青山さんは、これまで映像作品も手がけられてますけど、映画は初めてですよね。映画監督をやりたいという気持ちはあったんですか?
青山 なかったんです。なぜなら自分の手に余ると思ってたし、それ以前に写真という表現が何よりも好きだから。では、なぜ監督したかというと、単純にオファーをいただいたからです。
tofu なるほど。お話をいただくこと自体、大事なことですもんね。
青山 僕には、映画監督としての技量や経験が伴っていないわけですよね。それなのにオファーをしてくれる方がいて、その方はずっと映画の世界で仕事を続けている。であれば、写真家である自分が取り組む意味が、何かしら必ずあるはずだから、それを探りたい気持ちもあったんです。ただ、こんな貴重な機会は滅多にないだろうと思ってて、現場でも「僕の引退作です」って言ってたんです。
tofu デビュー作にして引退作! 僕はサンプルDVDで完成品を観させてもらったんですけど、2時間ずっと笑ってました。
青山 たぶん、その見方で正解なんですよね。こっそりプライベートで鑑賞するような感覚で観てもらうと、いいと思います。
tofu それもハマりますね。僕も自分の部屋でトッポ食べながらニヤニヤ観てましたから。この映画には、まさに深夜ドラマにありがちな、ベタなシチュエーションがいくつも出てくるじゃないですか。そのベタなエロと、ふいにバシッと決まるカットのコントラストが面白すぎて。
「写真ではできないこと」をやりたかった
青山 お色気の内容に関しては、いかがでしたか?
tofu 想像してたよりずっとエロかったですよ。
青山 僕は最初、すごい悩んでいたんですよね。自分の写真の表現にはない過激な表現に取り組むべきか、今まで築き上げてきたイメージを守るべきか。
でも、「自分のイメージを守ることって、この映画のためにいいことなのか」と疑問に感じはじめて。そこで改めて自分が監督をする意味を考えて、せっかくの機会をいただけた映画では、写真では表現できないことをやったほうがいいと思ったんです。
tofu 写真ではできないこと?
青山 まず、写真家って、誰でもすぐなれるんですよ。「写真家」って書いた名刺を作って配ればいいだけから。
tofu 肩書きを名乗ればなれる。いまは誰でもシャッターを押せばきれいに撮れる時代ですしね。
青山 じゃあ、そこで写真家が写真家たり得るにはどうしたらいいか。これは僕個人の考え方ですけど、自分の人生をどれだけ深く写真に結びつけてゆけるかが重要だと思うんです。たとえば「スクールガール・コンプレックス」は、僕が思春期に抱えていた女性に対するコンプレックスを写したものだし、「ソラリーマン」という作品は、サラリーマンだった父が亡くなってから撮りはじめているんです。
tofu どちらの作品も青山さんの人生と結びついているわけですね。
青山 人生といっても、特別なものである必要は全然ないんですよ。一見平凡であっても、自分の生き方を写真に残せれば、写真家は写真家たり得ると思うし、それが、僕が「写真でできること」なんです。だから「写真ではできないこと」とは、自分の人生とは関係のない表現をすることで、映画における僕の視点や、登場人物と僕の関係性は、もちろん何もないわけです。
tofu いきなり突き放しましたね(笑)。
青山 でも、関係ないからできる表現ってあるんですよね。自分と関係あるものしか表現しないのは、ある意味引きこもり的な、殻を作ってその中で創作しようという態度なので。僕は写真を撮るときはそんな態度で、自分の殻から外に出ないし、出たらそれは「自分の作品じゃない」と思っています。
tofu たしかにこの映画における表現は、青山さんの作品としてはありえないラインですよね。本編が始まって20分くらいで、すごい勢いで殻をぶち破って、「そこまでやっちゃうんだ!?」みたいな。
青山 あと現場で思ったのは、女性が作品のために脱ぐというのは、とても大変なことで、覚悟がいると思うんです。それなのに、自分の表現の枠内でリミッターをかけていたら、失礼な話で。脱いでくれる覚悟に、こちらも覚悟で応えていかないと。脱いでよかったと思ってもらえるように、品性は保つように心がけました。そのあたりが、映像に載っているんじゃないかと思います。
tofu 観てても、一切出し惜しみを感じなかったですね、ほんとに。それでいて、すごくさわやかに仕上がってるんですよ。最初は「こりゃエロいなー」と思いながらトッポ食べてたんですけど、中盤以降は気がつくといい話になってて、うまいこと丸め込まれる感じ。で、最後にてんちむさんがにっこりしたら、それで「よし!」ってなりますよ。
青山 さっき「引退作」と言ったとおり、やっぱり僕は写真を撮る人だし、次のことは一切考えていないんです。でも、だからこそこの一本に、自分なりにできることをなるべく全て詰め込められれば、最高かなと。もう当たって砕けろで、そのまま燃え尽きていく感じで、監督しましたね。
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