【ハーレクイン豆知識:カウボーイ】
アメリカではカウボーイが大人気。といってもハーレクインに登場するカウボーイは、西部劇で想像されるような牛を飼育する労働者ではなく、牧場経営者や石油王でジェット機を所有しているリッチなヒーローばかりです。ただし、日本ではカウボーイ=ゴージャスというイメージがないため、カウボーイがヒーローの作品はあまり刊行されていません。
『雨の日突然に』は、日本でも圧倒的人気を誇るハーレクインの女王ダイアナ・パーマーがカウボーイを描いた作品。ワイルドな魅力を持ったヒーロー・ジュードに注目です。
Cowboy / Moyan_Brenn (back soon, sorry for not commenting)
【作品紹介】
2年におよぶ介護の末、母を亡くした名家の令嬢ベスは、財産がすっかりなくなってしまったことを知って愕然とする。屋敷は手放そうか思い悩んでいたときやってきたのは、お嬢様育ちの彼女を毛嫌いしている、冷徹な男・ジュード。ベスは突然、彼に抱き上げられ、屋敷から連れ去られて……。
とつぜんドアチャイムが鳴って、ベスはびっくりした。こんなひどい雨のなかを、訪問客が来るなどとは思ってもいなかったのだ。
ベスは鏡に顔を映してみた。髪が乱れていたが、髪を整える時間も、化粧をする時間もなかった。顔色が悪く、病人のようだった。 玄関のドアを開けたとき、ベスはゾッとしてしまった。
まえに立っているのは、女なら誰しも夢に見るような男だった。
背が高く、肩幅が広く、脚が長く、高価なピンストライプのスーツを身につけ、テンガロンハットをかぶり、ブーツをはき、まるで男性用のファッション雑誌の表紙から抜け出したかのようだった。けれどよく日焼けしているその顔は、石を刻みあげたように無表情なものだった。口は引き締まり、あごはいかめしい。深く落ちくぼんだ淡いグリーンの目はぎらついていた。太い眉はテンガロンハットからのぞいている髪と同じ、まっ黒だった。男のいかめしさに、ベスは思わずあとずさった。
「ぼくが来るのを期待していたんだろう」
ジュード・ラングストンが低い声でいった。 かすかにテキサスのなまりがあった。
「洪水や地震や火山の爆発を期待するように、ですけど」
ベスは不安を隠すため、わざと冗談混じりにいった。ジュードをまえにすると、どうしても不安になってしまうのだ。
「どうしていらっしゃったのか、たずねるつもりもありません。母の遺言をごらんになったんでしょう?」
ジュードは荒々しくドアを閉めた。
「どこで話そうか」
ジュードがいった。
ベスは自分がまだオークグローブのミス・ホワイトであることを思い出し、ジュードをリビングルームに通した。
「相変わらず、社交界の女性というわけか」
ジュードがからかい、ソファに腰を下ろした。
「コーヒーをもらえるかな、ミス・ホワイト。それとも使用人は今日は働いていないのかね?」
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。