第26回】ハーバードはなぜジーニアス(可能性)を問うのか―型にはまらない新しい世界エリートの働き方

『可能性を見つけよう 世界のエリートから学ぶ自分の枠を突破する勇気』(講談社)を上梓した石角友愛さん。16歳で単身渡米後日本でインキュベーションビジネスを起業。ハーバードビジネススクールを卒業し、グーグル本社の勤務を経た石角さん。現在は米国のジョブマーケットが抱える問題を解決するサイトを運営するJobArrive社の代表を務める彼女が考える「グローバル社会で働くこと」について語っていただきました。


〔PHOTO〕gettyimages

以前、『私が白熱教室で学んだこと』(阪急コミニュケーションズ)を出版された石角友愛さんが、3冊目の著書を出版されたということで、インタビューを行った。3冊目は、『可能性(ジーニアス)を見つけよう〜世界のエリートから学ぶ自分の枠を突破する勇気〜』(講談社)という本で、ご自身が大学時代に学ばれた心理学の様々な研究を紹介し、サイエンスの世界の学術的見地溢れる実用書となっている。今回はその内容を簡単に紹介したい。


可能性を見つけよう 世界のエリートから学ぶ自分の枠を突破する勇気

田村: 出版おめでとうございます。早速読みました。非常に面白かったです。まずは、3冊目を書いた経緯について教えてください。

石角: ありがとうございます。2冊目は『ハーバードとグーグルが教えてくれた人生を変える35のルール』(ソフトバンククリエイティブ)という本だったのですが、これまでとは違う内容の本が書きたいと思っていました。

自分の専攻でもあり趣味でもある心理学という学問は、ビジネスや自己成長、はたまた幸せな人生を送るために、非常に役立つ見識で溢れているのです。それを、ハーバードビジネススクールやグーグル本社、シリコンバレー起業などを経た私が感じている「グローバルエリートの働き方」という切り口で紹介することで、日本のビジネスパーソンや志の高い方々に役立つ内容になるのではと考えました。

シリコンバレーの企業も使う、自己分析テスト

田村: 確かに石角流自己分析テストなども入っていて、面白いですね。僕も早速テストをやってみましたが、結構当たっているなと感じました。

石原: あれはアメリカでは主流の自己分析テスト「マイヤーズ&ブリッグステスト」を私が簡易化したもので、たった4つの質問に答えるだけで自分の性格の特徴とそれゆえのキャリアの方向性がおおまかに掴めるという、非常に面白いものです。自己分析テストはシリコンバレーの企業でも当たり前のように使われていて、友達との会話で「私はESTJで夫はその真逆のINFPなの。よくこれで共感し合えるわよね(笑)」というような台詞も出てくるほど浸透しています。

田村: 僕が注目したのは、パーソナリティタイプに優劣はなく、それぞれのタイプに合ったキャリアパスがある、というところです。

石角: そうですね。それぞれの人間が本質的に持つ強みを「ジーニアス」と本書では呼んでいますが(古来ジーニアスとはそのような意味を持つ言葉だったのです)、それを明瞭化することで、エリートの型に自分をはめ込もうと闇雲に英会話を習ったり、資格を取ったりしないでよいのではないかと考えました。

私が見てきたグローバル社会で働く人々は、自分の強みを非常に冷静に理解しています。そして、それは多種多様なんです。グーグルの根幹である検索機能に携わる仕事を本社でされている日本人エンジニアの方とも仲良くさせていただいていて、彼は間違いなくエリートなんですが、皆さんが想像されているエリート像に当てはまらないと思います。

英会話や資格取得は勿論大切な一歩になることに間違いはないのですが、自分を理解しないまま闇雲にこのような努力に時間とお金をかけるのは、逆に自分が目指しているところへ到達するうえで遠回りになってしまう気がするのです。

Vulnerableはポジティブな言葉

田村: 確かに自分の強みを客観的に理解している人は取捨選択もできるし強いですよね。あともう一つ「Vulnerable」という言葉に関する見解が興味深かったのですが、普通であれば、「打たれ弱い」と訳すところを、「リスクに自分を常にさらした状態にする」という風に訳されていますね。このような風潮があるのでしょうか?

石角: 直訳すれば、確かに「打たれ弱い」「狙われやすい」という意味ですが、それを意訳して、「リスクを恐れずに自分をさらけ出す」という意味合いで使われることが多くなってきています。本の中でも触れましたが、Twitterの創業者も自分自身に「Vulnerableになれ」と言い聞かせていると言っていましたし、ヒューストン大学のブレネーブラウン教授も同じような話をされています。

この間、ヨガのクラスで先生が非常に高度な技を披露していて、先生はそのとき「I'm making myself vulnerable」と言って皆を笑わせていました。これは、皆の前で高度なポーズを披露して失敗するかもしれない、恥ずかしい思いをするかもしれないというリスクを承知の上で挑戦しているからそう言ったのです。実はこれは、ネガティブに見えて非常にポジティブな言葉なのです。

ヨガで新しいポーズに挑戦することは、小さなことですが結構度胸が必要です。同じように、新しいことに挑戦するとき、自分の考えを発信するとき、大切な人に自分の心の内を明かすとき、傷つくかもしれないリスクを伴いますが、それでも自分をそういった状態にしておくことが重要なのだ、と教えられた気がします。

田村: それがグローバル社会で働く上でも重要だということですね?

石角: その通りです。なぜなら、Vulnerable=挑戦だからです。日々同じことのみを繰り返していて、自分の仮説も疑わずに居心地のよい仕事だけをしていたら、これからのハイパーコネクテッドな競争社会ではすぐに自分の仕事が奪われてしまうからです。そしてグローバルな社会では多様な価値観が存在するので、社員のパフォーマンスを評価する基準は、「成果」と「意欲」だと思うのです。

私自身が今、人を雇って管理する立場にいますが、やはり常に意欲的に挑戦する姿勢の社員というのはとても信頼できますし、もっと大きな仕事を任せてみようと思います。具体的には、頼んでいないことでもどんどん進んで提案し実行する姿勢などですが、そういう提案をするときも、ある意味自分をVulnerableな状況においているわけですよね。でも、そのリスクを取った上で実行する方を選ぶ、という姿勢がグローバル社会では重要なのです。

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y_izm これはフェスに有効だ!買おう! https://t.co/0RcQJTjUeL 4年以上前 replyretweetfavorite

AileenTylor |知のグローバル競争 最前線から|田村耕太郎|cakes(ケイクス) 読みたい。 いつ読もう。 https://t.co/KvP18enJa4 4年以上前 replyretweetfavorite