第50回】蜜月が続く独中関係と、目を覆いたくなる日独関係の実態

商売において中国との蜜月関係を強調するドイツ。中国がいかに大切な国であるかを繰り返し報道するドイツのメディア、投資家の間でも中国ブームはますます過熱し高揚したムードだ。一方、4月30日にベルリンを訪れた安倍首相とメリケル首相の首脳会談の様子については、夜のメインニュースで一切取り上げられなかった。日本はドイツでは韓国大統領が訪独した時と同じ扱いなのだとがっくりきた筆者であった。


〔PHOTO〕gettyimages

ドイツにとって、アジアで一番重要な国

3月28日、習近平がドイツを訪問した。ドイツと中国は、ここ5~6年、蜜月が続いている。2011年には、二国間政府サミットの協定も結ばれている。二国間政府サミットというのは、両国の懸案を二国間で集中的に審議するためのもので、首脳や閣僚が少なくとも年に一度差し向かいで会談するばかりでなく、企業の大物が一緒に移動しては、随時、大型商談も締結する。

要するに、中国とドイツの間では、政治、経済、文化すべてにおいて、交流がたいへん密である。一番密なのは、もちろん商売。人権問題についてはすでに2008年より、申し訳程度にしか言及されない。

今回の訪問の際も、メルケル・習両首脳が見守る中、18件の大型商談の契約書に次々とサインが取り交わされた。ドイツの車メーカーの、中国でのフィーバーぶりは今も凄い。

2012年の中国におけるドイツ車の販売台数は1320万台で、4年間で2倍になった。2000年から見ると、12年間で20倍の伸びだ。そのうえ、エアバスも、50機、100機とまとめ買いしてくれる。ドイツにとっては、大変有難い国だ。

ドイツ製品の中国への輸出総額は、フランスとイギリスとイタリアとスペインを全部合わせた額よりもまだ多い。しかし、中国がドイツへ輸出している額は、それよりさらに多い。中国はことあるごとに、ドイツがいかに中国にとって大切な国であるかを繰り返し強調。

それに対してメルケル首相も、やはりことあるごとに、「中国はドイツにとって、アジアで一番重要な国である」と返礼している。当然のことながら、ドイツの投資家の間での中国ブームは去るどころか、ますます過熱するばかりで、いまだに、乗り遅れては大変という高揚したムードだ。

中国の大国意識と新しい外交政策

さて、大型商談締結の喜びも冷めやらぬ3月28日の夜、ある財団が、習金平主席を主賓に据えてベルリンで晩餐会を催した。現役の政治家は招かれていない。そのときの習主席のスピーチの内容が日本にも漏れ伝わっており、習氏が南京事件や尖閣問題について一方的な意見を披露したことについて憤慨した人も多かったと聞く。

ただ、私はスピーチの全内容をドイツ語訳で読んだが、習氏の30分近いスピーチの主目的は、日本批判などではなかったと思っている。ドイツメディアも、日本批判の部分は全く取り上げなかった。

習氏の目的は、中国がこれから世界の大国として世界政治に積極的に関与していくという意思の宣言である。そのために、中国が太古よりいかに平和を愛する国であったかということが、スピーチの初めから終わりまで、これでもか、これでもかと強調された。侵略など一度もしたことがないという件(くだり)には、ビックリ仰天だ。

いずれにしても、中国は、今までのように輸出の世界チャンピオンであるだけではなく、世界の安全保障と政治に関与する大国になるのだという高らかな宣言がこのスピーチの言わんとすることである。

そして、そのメッセージはちゃんとドイツ人に伝わったらしく、翌日は、これを中国の大国意識、および、新しい外交政策の始まりとみる報道が相次いだ(この習近平氏のスピーチについては、現在発売中の『WILL』6月号に詳しく書いた)。ドイツ人は、中国の大国宣言に、おそらくあまり危惧は感じていない。元々、直接の脅威はないし、一緒に儲けられるなら幸いと思っているのだろう。


中国を訪問したシュタインマイヤー氏〔PHOTO〕gettyimages

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シュトゥットガルト通信

川口マーン惠美

シュトゥットガルト在住の筆者が、ドイツ、EUから見た日本、世界をテーマにお送りします。

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