言葉

重度の自閉症を抱えながらも、社会を鋭く見つめている作家・東田直樹さんの連載です。
障害によって、幼い頃から「自分の思いを口にする」ことができなかった東田さん。手作りの単語カードなどを使って言葉を覚え、さらに筆談を習得したことによって、自分の思いを伝えることができるようになったそうですが、そこに至るまでのあいだには、どのような思いがあったのでしょうか。
五月の風のようにさわやかで清冽な、今週のコラムです。

 僕は、昔のアニメを、インターネットの動画サイトで見ることがあります。

 それは、日本語や英語ではなく、これまで聞いたことのない外国の言葉で放送されています。耳慣れない言語に、最初は違和感がありましたが、何度も繰り返し聞いているうちに、僕もその国の言葉がつかえるような気分になります。

 すると、日本語で見ていた時と同じように、どきどきわくわくしながらアニメそのものを楽しめるのです。言葉の意味はわからなくても気にならなくなるのでしょう。


 言葉がなじんでくるという感覚は、外国に行ったことのある人なら誰もが体験したことがあると思います。

 誰にも気持ちをわかってもらえなかった頃、僕は、まるで暗い洞窟の中にいるように、ただ寂しかったです。
 話ができなければ、人からは言葉がわからないと判断されます。そして、話しかけてもらえなかったり、自分とは違う世界の人のように見られたりしてしまいます。

 僕にとって家族の声かけは、光そのものでした。言葉というものは、長い時間をかけて育てていくものではないでしょうか。

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跳びはねる思考—22歳の自閉症作家が見た世界

東田直樹

「僕は、まるで壊れたロボットの中にいて、操縦に困っている人のようなのです。」 会話ができないもどかしさや意に沿わない行動をする身体を抱え、だからこそ、一語一語を大切につづってきた重度自閉症の作家・東田直樹。 小学生の頃から絵本...もっと読む

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