クリエイティブな人材はどこにいる?
自分の会社以外で働いているところを見るのも、クリエイティブな人をみつける優れた方法である。
だがこういうと、だいたい笑われる。「ほかの会社に行き、その辺に座って観察なんてできるはずがない」といわれるのだ。
そんなことはない。どこに行けばクリエイティブな人がみつかるのか、クリエイティブに考えていないから無理だと思うだけで、実はちゃんとみつけられる。
クリエイティブな人がクリエイティブな仕事をしているとはかぎらない。いまの労働市場(および採用方法)には、クリエイティブな人が仕事を得られない——少なくとも、自分がやりたいと思う仕事が得られないという問題がある。好奇心や情熱だけでは部屋代もまかなえなければご飯も食べられないので、好奇心や情熱をたっぷりもっている人がおもしろみのない仕事についていることが少なくない。背に腹は代えられないわけだ。
ウエートレスを引き抜き、ノースフェイスの店員を引き抜き……
私は、クリエイティブな仕事ぶりに興味を惹かれて人を採用したことが何度もある。
カリフォルニア州のピザレストランで働いていたウエートレスもそのひとりだ。とってもおもしろい女性で、私の下手なジョークもうまくフォローしてくれた。彼女がいるだけで楽しい雰囲気になるのだ。1万ワットのスポットライトに照らされているのではないかと思うほどだ。その場でウチに来ないかと誘い、画期的なマーケティングプログラムを作ってもらうことにした。実際、彼女は、ウエートレス時代と同じ積極的なエネルギーを新しい仕事に注いですばらしい働きをしてくれた。
カリフォルニア州パロアルトにあるノースフェイスの店へキャンプ用品を買いにいったときのことも紹介しよう。
対応してくれた若者は用具の知識が豊富なうえ大のキャンプ好きで、彼と話していると楽しくて時間を忘れるほどだった。商品知識が豊富で魅力的、そのうえ客を楽しませられる販売員というのはめったにいない。だから、彼にはチャッキーチーズ〔※北米の人気ピザチェーン店。創業者は著者〕で働いてほしいと思った。顧客サービスを担当してもらったところ(彼の才能が顧客サービス向けなのは明らかだった)、わずか1年で顧客サービス部門のトップになってしまった。
人は、だいたい、自分が見たいと思うものしか見ない。ウエートレスを見ているのだと思えばウエートレスしか見えないが、身のまわりの人すべてを採用候補者だと思って見れば世界は一変し、可能性が大きく広がる。目隠しを外そう。クリエイティブな人はあんがい身近なところにいるのだ。
仕事時間ではないから、あるいは、なにか用事をしている最中だからと人捜しをやめないこと。そのあたりでごくふつうに見かける人のなかにもクリエイティブな人がいるのだから。