「なに、これ?」
「アートじゃない? きっと。アートよ、アート」
通りかかった人たちが、歩きながら通路の両側の壁を見て、不思議そうにしています。
「へえ、絵も写真も彫刻も。なんでもあるんだ」
そう言ってしばし立ち止まる人も、かなりいますね。
ここは東京駅の丸の内側の地下構内。丸ビルと新丸ビルのあいだにある、幅広で直線の行幸地下通路です。左右の壁がガラス張りの展示スペースになっていて、「行幸地下ギャラリー」という名で折々さまざまな展示をしています。
とはいえ、とりたてて入口も出口もなし。通路をたまたま歩いていた人も、展示を観に足を運んだ人も、その場に行けば等しく自由に作品を見られます。この気軽な感じ、いいですね。街にすんなりとアートが溶け込んでいます。そもそも作品を観るのに、改めてかしこまる必要なんてどこにもないのです。そんなことを、展示の方法で示してくれている貴重な場だとおもいます。
現在ここで開かれているのは、「アートアワードトーキョー丸の内2014」という展覧会。全国の美大、芸大の卒業・修了制作展をリサーチし、これぞ、というおよそ30人の作品が選別され展示してあります。会期中の4月26日には公開審査が開かれて、展示作のなかから各賞が決定されましたよ。
行幸地下ギャラリー。両壁に作品が並ぶ。
グランプリを獲得したのは、京都市立芸術大学大学院の谷中佑輔。作品は、展示スペースいっぱいにさまざまな色、かたち、素材が広がる不思議なオブジェ様のもの。彫刻作品といえばいいのでしょうか。これが全体で何を表しているのか、各部位にどんな意味が込められているのかは、じっと見ていてもなかなか解読できません。それでも、この色とかたちの塊を、なんだかじっと眺めていられるのはたしかです。
グランプリに選ばれた谷中佑輔の作品
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