横領して愛人に貢いだ……「女性犯罪者」への関心
「女が女を語る」時代になったもう一つの理由は、「女の闇」を語る女たちが増えたからだ。
女性犯罪者への視線も同じように変わった。
1981年(私は中学生だった)、三和銀行の女性行員だった伊藤素子が1億3000万円を横領したことが大ニュースになった。横領した金額が大きかったことだけではなく、彼女が愛人男性に貢ぐために横領に手を染めたこと、さらに彼女が美人であったことで、多くの男性たちが興味を持ったのだ。
このように、女性犯罪者に興味を持つのは男性が多かったものだが、女性たちもまた女性犯罪者を語るようになっていく。
1982年に同僚のホステスを殺害して、美容整形を繰り返しながら逃亡し、1997年に逮捕された福田和子。1998年の和歌山毒物カレー事件で死刑宣告を受けた林真須美。
彼女たちの容姿や生き方などに、共感や反発などを覚えながらも語る女性たちが増え始めてきた。
そして、2009年に発覚した首都圏連続不審死事件の木嶋佳苗こそ「女性が語る女性犯罪者」の象徴だろう。
「あの容姿でなぜ、あんなに多くの男性を騙すことができたのか」などと、木嶋について語る女性たちは多い。
そして、木嶋についての記事は、女性の書き手たちによって書かれることが多いが、語り手の女性の自我が反映されているために、語られる木嶋像はバラバラなのである。
「東電社員殺人事件」で時代が変わった
かつて女性が関わる犯罪に興味を持つのは、男たちだった。
それが決定的に変わったのは、1997年に起こったいわゆる「東電OL殺人事件」である。
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