中編】被災地を変えるのは「部外者」だ

阪神・淡路大震災を経験し、それが作家になる決意をさらに強くしたと語る真山仁さんと、東日本大震災で壊滅した故郷で起業し、現在奮闘中の岩佐大輝さん。二人が見つめる、被災地やボランティアの課題とは? 対談中編では「部外者」の大切さについて議論が及び、さらに深部まで被災地の問題点を掘り下げていきます。(構成:宮崎智之)

神戸と東北におけるボランティアの違い

岩佐 統制のとれたボランティア集団の存在はありがたいけど、一方でその影響で被災地にあった創発性をうながす「そわそわ感」が失われてしまった—。そうした可能性についてはどう思いますか?

真山 あると思います。私自身、阪神・淡路大震災では被災しているのですが、あの時は、最初からボランティアが入ってきたわけではありませんでした。まず、被災した人たちが「助けてや」と友人に電話するところからはじまった。そうしたら、彼らがリュック背負いながら歩いてきてくれた。そうして集まったボランティアのなかに徐々に秩序が生まれていき、現地の人たち自身が役割を見出していきました。しかし、東北の場合は、地域が機能する前にボランティアが入ってきている。そしてそのボランティアたちは、今回の震災ではなく、すでに完成されたルールにしたがって動いた。

岩佐 なるほど。

真山 さらに東北の方の気質でもあるんでしょうけど、目の前に瓦礫があって撤去できる人手があるのに、ボランティアが来るまで自分たちではやらないというケースもあったそうです。

岩佐 なぜですか?

真山 「せっかく来てもらうのに」というボランティアへの遠慮の気持ちが勝ってしまうのでしょうね。誰かが撤去しようとすると、「明日、ボランティアの人が瓦礫撤去に来てくれるから、そのままにしておいて」と言う人がいる。

岩佐 それでは現地にクリエイティビティは生まれませんよね。

真山 しかも、ボランティアは3年などの時限つきで活動している団体がほとんどです。その彼らに頼りきってしまうと、ボランティアが去った後には、泥を除去したり、ゴミを収集したり、お年寄りに声を掛けたりといった、それまでなら当然のように自分たちでしていたことを忘れてしまった、地域の人たちが残る。

岩佐 最終的に現地に住み続け、働き、生活していくのは被災者の方々ですから、それではいけません。真山さんの作中にも、仕事がなくなった漁師の父親が避難所でお酒ばかり飲んでいる描写が出てきていました。

真山 実際にそういう方が多かったようです。そういう人たちになぜ、瓦礫の撤去を仕事としてさせてあげないのか。被災者ではあっても、弱者として扱うだけではよくないと思います。彼らは力があるし、自尊心が傷つけられているんだから、労働の報酬を受け取ることでどれだけ気が楽になるか、と思うんです。

岩佐 その通りですね。

真山 実はそうした被災者がボランティアに頼りきってしまった状況は、ボランティアをする側にとってもあまりよくない事態を生みました。たとえば、ボランティアで来た都会の若者のなかには、被災地で生まれてはじめて「ありがとう」と言われたという人が少なくない。すると、被災地を「自分の生きる場所だ」と思ってしまい、一週間の有給休暇期間で帰る予定だったのに会社に電話して仕事を辞めてしまう人まで出てくる。

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被災地に実る絶望の中のチャンス—真山仁×岩佐大輝対談

真山仁 /岩佐大輝

東北を中心に甚大な被害をもたらした東日本大震災の発生から3年。遅々として進まない復興や風化を危惧する声も出てきていますが、そんな被災地に対して特別な思いを抱いている二人がいます。「ハゲタカ」シリーズ著者であり、被災地の小学校を舞台にし...もっと読む

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コメント

office_mayama 真山仁×岩佐大輝対談(2) ↑ この2人による対談セミナーが、6/24(火)に仙台で開催されます!http://t.co/lLwkWlL2Su 4年弱前 replyretweetfavorite

sumita_hiroki これは日本中で大事な意見だと思う。 約4年前 replyretweetfavorite