京都に来ています。夏の暑さ、冬の寒さは厳しい京都ですが、この時期は街全体にたいへん心地いい風が吹き渡っていますね。海外からの観光客もたくさんで、みな満面の笑顔で歩き回っておりますよ。
そんな京都各地で、国際的な催しが開かれています。「KYOTO GRAPHIE 第2回国際写真祭」というものです。伝統文化と現代アートの融合を実践しようとのもくろみを持つイベントで、町家など日本の歴史を感じさせる環境に写真作品を展示します。それによって新しい表現の創出を促し、これまでにない場の雰囲気を体感してもらおうという試みのようです。
京都駅ビル7階東広場では西野壮平の大型ジオラマ作品が、龍谷大学大宮学舎本館ではフランス人写真家リリアン・バスマンの個展、京都芸術センターではフランス国立造形芸術センターの写真コレクション展など、15ものプログラムが同時に展開。ボリュームたっぷりのフェスティバルになっています。京都観光をしながら要所、要所で写真作品に触れていくといった回り方が、いちばん楽しめるかもしれませんね。
フェスティバルの雰囲気をよく伝える会場をひとつ、ご紹介いたしましょう。有斐斎弘道館での「ネイチャー・イン・トーキョー」です。京都御所のすぐ脇、落ち着いた住宅地のなかに位置するこの弘道館は、江戸時代に開かれた学問所です。儒者の皆川淇園が創設し、門弟に教えを施しました。その跡地で建造物が保存され、さまざまな催しができるようになっているのです。
立派な門をくぐり、緑色が鮮やかな庭園を愛でながら建物内に入ると、不思議な光景が。畳敷きの広間に、ずらりと卓状のものが並んでいます。座り込んで覗くのにちょうどいい高さ。その一つひとつに写真作品がはめ込まれていて展示をかたちづくっているのです。
観る側は、畳に腰をおろして、美しい庭園を前にしながら、写真を見下ろすことになります。日本家屋は内部が暗いので、写真をじっくり見るには光量不足のようにも思えますが、その分じっくり写真を見つめることになって、作品としっかり向き合える気がいたしますよ。
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