自分で読みなおしても、どうかしてるマンガだなと思う。

はじめは誰もが共感できる、経験したことのある出来事を描き、クライマックスで誰も経験したことのない、でも誰の身にもおこりうる経験を描き出す。連載当初から計画済みだったという「衝撃の事件」が見事に発動し、その先に、感動と反発を同時に引き出す最終回が現れました。そのトゥルーエンドが実現したのは、絵と言葉の演出の成せるわざでした。極端なデフォルメがほどこされたプンプンの「顔」の意味から、マンガでネガティブな感情を描く意味、言葉という呪いについて真正面から語ってもらいました。(全5回、聞き手・ライター 吉田大助)

【ネタバレあり、未読のひとはご注意ください】

— 『おやすみプンプン』の最大の特徴は、主人公の鳩サブレみたいなプンプンのビジュアルですよね。プンプンは、読者には鳩サブレとして見えているけれども、登場人物たちには普通の人間の顔として見えている。プンプンの本当の顔は、デザインしていたんですか?

浅野いにお(以下、浅野) していないです。みんなが勝手に想像してくればいいから、僕も考える必要はないと思ってやってたんで、プンプンの「本当」の顔は、一回も想像したことがないです。


『おやすみプンプン』12巻より

— コミックス10巻が出たあたりで、小さな評論を書く機会があったんです。
 顔かたちが誰にも似ていないがゆえに、逆に誰もが感情移入できる、自由に表情を想像できる。あのデフォルメはそんなふうに機能していると最初は思ったんですが、殺人のエピソードが発動した時に気づいたんです。顔がリアルに描かれることがないからこそ、プンプンの言動を正面から見つめ続けることができる。読者に対してもそうですし、作者自身も、あの顔だったからこそ描けたことがあったのではないかと。いかがですか?

浅野 そうですね、仮にプンプンの顔がちゃんとあったとしたら、描けないエピソードがいっぱいあっただろうと思います。
 例えば人を殺している時の顔とか、描こうと思えば描けますけど、そんなマンガが求められるとは思えない。そのシーンを読んでもらったうえで、その先のストーリーを読んでもらうのが本題だったから、プンプンがあの顔をしている意味は大きかったと思います。

— 「人を殺す」と決めたのは3巻の時とおっしゃっていましたよね。第1話でプンプンを鳩サブレにした時、その機能性を直感的に把握していた?

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完全】さよならプンプン【ネタバレ】浅野いにおインタビュー

浅野いにお

初恋、失恋、童貞喪失、家族との確執、大恋愛。フツーの男子の人生に起こるイベントを、丁寧に、厳密に描く……と思いきや、終盤でまさかの「事件」が起こり、誰も見たことのない地平へと突き抜ける。浅野いにおさんのマンガ『おやすみプンプン』が、お...もっと読む

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コメント

patorishia_j_p 続き読みたいのに、、、有料て!( ;∀;) https://t.co/UVCIppWJvM 2年以上前 replyretweetfavorite

rabbits_karte おやすみぷんぷん読み終わった 1mmも共感できないのに面白いってすごいな なんじゃこりゃ 2年以上前 replyretweetfavorite

_xxyk あ、あ、、初めてcake課金に悩んでいる…  2年以上前 replyretweetfavorite

homerutronica 顔が無いから描けるシーンがあったっての面白い 4年弱前 replyretweetfavorite