日本よりもデジタル化進む
日本のような放課後教室ではなく、インドでは学校に直接アプローチする。インドの現場はデジタル化が進み、私立学校の7割が「スマートボード」と呼ばれる電子黒板型の教育機器を導入済み。全科目の教育内容がコンテンツとして組み込まれ、タッチパネル式の画面で理論や知識を学ぶシステムで、私立学校に子供を通わせる中間層以上の親からは、「これがなければ時代遅れ」との声も聞かれるほどだ。
一方、学研のウリは、巨大な風船を膨らませて空気に重さがあるか調べるなど体感型の実験教材。「デジタル教育に対し、学研は究極のアナログ教育。最初は戸惑いがあったが、そうした教材が市場に不足している分、実際は強みになった」(学研ホールディングスグローバル戦略室の井手康輔氏)。
インドの教師は理論が頭に入っていても、どう教えたらよいか分からないことがあるという。また幹部レベルの教育者には、世界に名だたる品質の自動車や家電製品を作り出せる源が日本式の教育だと認識されていることも追い風だった。デジタル化教育では画面で見て理解する内容を、実際に経験して身に付けられる点を評価した学校と契約を結ぶことができるようになった。
「結果重視」への対応が課題
ビジネスモデルは、学研が学校側と契約を結び、学校側は保護者の同意を得て学研への支払い分を学費に上乗せする仕みだ。しかし、親は「成績や目に見える効果には直結するのか」と手厳しい。学校側が有料で実験をして何が得られるのかをPTAに理解してもらうには、まだまだ労力を要する。将来は放課後教室の展開を視野に入れる学研にとっても、保護者の支持獲得は不可欠だ。
研究発表で成果を見せる
そこで実施しているのが、科学教室で学んだことを生かした自由研究で全国一を競う「科学コンテスト」だ。今年1月にファイナルが行われた3回目は、 全国から9,000人が参加した。審査基準は、アイデアの斬新さ、調べた情報の量、わかりやすくシンプルな作成方法、プレゼンテーション能力の4つ。日本の同じコンテストではレポート内容が審査対象だが、インドはプレゼンを重視する。井手氏は「受賞した子どもの学校にとっては栄誉になり、子どもには自信になる。親にとっては、自分の子どもがどう成長しているかという成果を感じられることが狙い」と言う。
アジア消費者ラボ2014年2月号
※本記事は、「アジア消費者ラボ」の2014年2月号「未来投資、親の負担ずしり」(特集・子どもの教育)に掲載されました。