第7回 春

突然聞こえてきた、大きくて“個性的”な歌声。声の主である黒髪の少女は、いったい何者――?

ボーカロイド楽曲の卒業ソング『桜ノ雨』をモチーフにした小説シリーズの完結編『桜ノ雨 僕らはここで逢おう』の発売を記念して、一部を公開します。
♪『桜ノ雨』動画はこちらから♪


『桜ノ雨』 作詞作曲:halyosy


 ずんだ餅キャラのマスコットにより、鍵の持ち主はすぐに判明した。翌日の昼休みに、由有が放送部にかけ合い、落し物のアナウンスをお願いしてくれたのだ。
 昨日の彼女は、モジモジした様子でわたしの机までやってきた。
「……あの、さっぎの放送聞いたんですけど。鍵、ここにあるっで」
 予想はしていたけど、イントネーションが東北弁まじりだ。
「うん。預かってるよ。はい、これ」
「はわ……! ズンモちゃん!」
「ズンモちゃん?」
「あ、この子の名前です。まだ試作の子なんですけど」
 試作? もしかしたら“ズンモちゃん”は彼女が作ったキャラクターなのかもしれない。
「本当にありがどうございまず!」
 その声にわたしはハッとした。彼女の声にはふしぎな透明感があった。ふんわりと心地良く、でも遠くまで響くような……。昨日の歌声ではわからなかったけど、彼女の声はとてもきれいなソプラノだ。
 興味がそそられたわたしは、歌について少し聴いてみたくなった。
「もしかして歌うの好きなの?」
「え……!?」
「昨日、音楽室の前で歌ってたから……。歌が好きなのかなあって思って」
 正直、ものすごい音程ではあったけど、敢えてそこは触れずにたずねてみた。
 すると彼女はふるふると首を振った。
「歌は好きです。けど……歌うのは嫌いです……」
—……!」

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桜ノ雨 僕らはここで会おう

雨宮ひとみ /halyosy

もしも初音ミクが音楽教師だったら…。 卒業ソングの定番ボーカロイド楽曲として、250万回以上の再生回数を誇る『桜ノ雨』。この名曲のノベライズ第3弾にあたる『桜ノ雨 僕らはここで逢おう』の発売を記念して、その一部を公開します。

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