2014年3月4週目の主なできごと
・出直し大阪市長選、橋下氏が当選 投票率は過去最低(3月23日)
・「8億円は選挙資金」 DHC会長、渡辺氏に提供認める(3月26日)
・中山美穂さん、辻仁成さんに離婚報道(3月27日)
・「袴田事件」袴田さん釈放、高裁も支持 検察の抗告を棄却(3月28日)
・世界フィギュア、浅田・羽生がアベック優勝(3月28日)
『いいとも!』という「終わりなき日常」の終わり
速水健朗(以下、速水) 『いいとも!』最終回のことは軽く触れておこうか。
おぐらりゅうじ(以下、おぐら) はい、じゃあ印象的なところだけ。僕はやっぱり番組の中盤、タモリ×さんまのトーク中にダウンタウン、ウッチャンナンチャン、とんねるず、そして爆笑問題が次々に乱入してくるところは興奮しました。全員が日常的によく見ている人達で、それぞれをパーツとして見ると当たり前の風景なだけに「日常が歪んでる!」って。
速水 その光景に感動した人たちがいる一方で、このステージに世代交代のない日本の象徴を見いだしている人たちもいた。見事にオーバー40歳なわけだけど。
https://twitter.com/supportista/status/450612057759432705
おぐら あの一大共演がすごかったのは、全員に役割や目的があるわけではなく、ただ出てきただけ、ただ一緒に同じ空間にいるだけっていう。もしあれが他の特番で、それぞれネタを披露するとか、何か対決するとか、審査員席で並ぶとか、とにかく目的なり企画を実行する中での共演だったら、あれほどの圧倒的な空気感は出なかった。だって何の目的もなく一緒にいるのって、普通の人同士でも何を話していいか分からなくて、気まずくなったりオロオロするのに。それが狙いだったかどうかは定かでないですけど。そして言うまでもなく、その場を共演者に委ねて徹底的に俯瞰するタモリさんの番組だからこそ成立したとは思います。
速水 樋口毅宏の『タモリ論』(新潮新書)って、まさにそこを論じたものだったよね。タモリとは、お昼のど真ん中に空いた空虚な中心であるって。最後では微妙に交わしていたけど、天皇論としても読める。皇居が東京の真ん中にある空虚な中心っていったのはバルトだけど。
おぐら もうあとはタモリさんの最後の言葉を待つだけ……かと思いきや、出演者のスピーチでもとんでもないシーンがありましたね。なかでも17歳から37歳まで20年間もレギュラーだった香取慎吾の、「そもそも何で終わるんですか?」っていう純粋すぎる問いかけもすごかったし、早口で「つよぽんがすごく仲良くてタモさん家に行ったりするの、すげえずっとうらやましかったです!!」とか、泣きながら「SMAPでも辛かったり苦しい時があって、そんな時に笑ってなきゃいけないのが辛い時もあって……」とか。普段はおとなしい子供が親や先生に一生懸命自分の感情を訴えている感じはものすごい胸に迫るものがあって、でも同時に「あ……ヤバい瞬間見ちゃった」とも感じました。
速水 彼らにとってみるといいともが学校だったわけだよね。良くも悪くも。
おぐら 対照的に、中居くんが冷静かつ感情的に「バラエティは残酷」と言っていたのもハッとしましたね。クランクアップのあるドラマや映画などと比較して「ゴールがないところで終わらないとならない。こんなに残酷なことがあるのかな」という的確なバラエティ番組批評に、ふと“終わりなき日常”という言葉が頭をよぎったり。
速水 最終回のトークゲストだったビートたけしも読み上げた表彰状の中で、二流芸人たちのための番組だって指摘してたのがまさにけど、いいともは「つまらないバラエティ番組」の発明だった。芸人が笑いの力量を発揮しないまま、ゲームやクイズをやるバラエティ番組っていいとも以降に生まれたものだよ。でも「つまらないバラエティ」っていうのは、まさに「日常」が「日常」たり得る上で重要なものだと思うんだよね。それを指摘したのは宇多田ヒカルね。「♪十時のお笑い番組 仕事の疲れ癒しても 一人が少しイヤになるよ そういうのも大事と思うけど」(『Keep Tryin'』)って。
木嶋佳苗と恋愛脳
おぐら 『いいとも!』の話はこの辺で、さあ、ようやく本題にいきましょう。
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