雨宮ひとみ /halyosy
第2回 春
母校の音浜高校に、音楽教師として赴任してきた未来。始業式での挨拶直前に、未来に話しかけてきたのは――?
ボーカロイド楽曲の卒業ソング『桜ノ雨』をモチーフにした小説シリーズの完結編『桜ノ雨 僕らはここで逢おう』の発売を記念して、一部を公開します。
♪『桜ノ雨』動画はこちらから♪

『桜ノ雨』 作詞作曲:halyosy
始業式といえば、やはり体育館で行われる一連の行事だ。
わたしは音楽を教える新任の教師として、全校生徒に挨拶をすることになっていた。
でも出番まではまだ時間がかかりそうな気配だ。
舞台袖で待機していたわたしは、パイプ椅子から少しだけ身を乗り出し、体育館の様子を覗いてみる。そこからは舞台に向かい、整列している大勢の生徒たちが見えた。
その光景にいつかの記憶がわーっと蘇ってくる。
それは高三の春、始業式から数日後に行われる“新入生歓迎会”のときの記憶だ。
合唱部の部長に就ついたわたしは、壇上に立ち、歌うことの楽しさや気持ち良さを、新入生にアピールする大役を担っていた。
でも緊張のあまり声が裏返り、それが最後まで気になってしまい、結局思っていたことの半分も話せなかったのだ。
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この連載について
雨宮ひとみ /halyosy
もしも初音ミクが音楽教師だったら…。
卒業ソングの定番ボーカロイド楽曲として、250万回以上の再生回数を誇る『桜ノ雨』。この名曲のノベライズ第3弾にあたる『桜ノ雨 僕らはここで逢おう』の発売を記念して、その一部を公開します。
著者プロフィール
ニコニコ動画にてVOCALOID楽曲の投稿、また「歌ってみた」カテゴリでの活動をしているクリエイター。2008年2月に投稿した初音ミク楽曲『桜ノ雨』はネット界隈だけでなく、一般層にまでファンを作るほど大きな反響をよんだ。自身が立ち上げた「桜ノ雨プロジェクト」により、『桜ノ雨』を合唱できるように支援している。ボカロ曲だけでなく、歌い手などへの楽曲提供も行っている。
脚本家、小説家。雑誌編集者を経てフリーの文筆家となる。脚本、小説、漫画原作、ゲームやドラマCDのシナリオなどを手掛ける。VOCALOID好きが高じてノベル『桜ノ雨 僕らが巡り逢えた奇跡』の執筆を担当することに。小説『Romeo×Juliet』(角川ビーンズ文庫)、『おんたま!』(ニコニコアニメチャンネル)他。