「基盤のある女性」とは何か
井川遥が専属モデルを務める雑誌「VERY」のキャッチコピーは「基盤のある女性は、強く、優しく、美しい」である。基盤のない女性たちよ、怒ってはいけない。言わせておけばいいよ、と必死に余裕ぶらないと、あちらのリアルな余裕っぷりに踏んづけられてしまうから。そもそも基盤とは何なのだろう。強く優しく美しいのは戦隊モノのセンターくらいのもので、愛と勇気だけがともだちだと教えてくれたあのアンパンマンですら、強くて優しいが美しくはないのだから、この3種盛りを読者の前提にするとはなかなかの強気である。「VERY」が広告クライアント向けに作った資料にある雑誌コンセプトから「基盤」の意味を探ると、「今の時代、家族という基盤があるからこそ、スタート地点に立てる!」「結婚前の20代、親にも会社にも彼にもいい顔をしていた自分とは決別。30代の今なら“本当の自分らしさ”を受け入れてくれる家族がいる」とある。なぜ「家族」を「基盤」に言い換えなければいけないのか、説明はない。“本当の自分らしさ”とは、かつての討論番組「真剣10代しゃべり場」が延々と探してはうやむやにし続けたテーマだが、堂々巡りで先送りした結果、こんなところに引き継がれて勝手に答えを出されていた。そうか、あの問いは基盤が無いと答えられなかったのか。それを早く言ってくれよ、おかげで悩みは膨らみ今度は“ニッポンのジレンマ”まで抱えてしまったではないか。
カウンターの中が似合うのは井川遥ではなく華原朋美である
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