重度の自閉症を抱えながらも、社会を鋭く見つめている作家・東田直樹さんの連載です。
今回のテーマは「涙」。幼い頃、いつも泣いてばかりいたという東田さん。そのときの涙は、今の東田さんに大きな影響を与えているようで……。弱さをみつめることの尊さを感じるような、今回のコラムです。
先週公開された東田さんのインタビュー「自分が望むように、学びたかった」も、合わせてお読みください。

 泣いても泣いても泣けてくるという体験をされたことがある方も多いかと思います。

 自閉症だった僕は、小さい頃、いつも泣いてばかりいました。
 問題を起こすたび、体中の水分が、全部涙になったみたいに、次々と涙があふれ出ていたからです。

 何がそんなに悲しかったのか、今となっては、ひとつひとつの理由は覚えていません。
 ただ、自分のことをわかってもらいたかった気持ちと、ありのままの僕でいられる居場所が欲しかった思いだけが、今も心に残っています。

 もしもあの時、僕が泣けなかったり、泣くことを許してもらえなかったりしたら、未来に期待する現在の僕は存在しなかったと思います。

 涙は、人の目からこぼれ落ちるものです。そして、喜びや悲しみという感情にともなって出てきます。
 涙も心を伝える表現の一つということなのでしょう。

 人間だから泣くのです。
 それは、人間が弱く、一人では何もできない動物だからです。

 泣くことは、弱さを認める行為ではないのでしょうか。
 僕自身泣くことを繰り返し、成長してきたような気がします。

 弱さを自覚するのは、強くなるためではありません。「助けてほしい」を人に伝えるメッセージだと考えています。

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跳びはねる思考—22歳の自閉症作家が見た世界

東田直樹

「僕は、まるで壊れたロボットの中にいて、操縦に困っている人のようなのです。」 会話ができないもどかしさや意に沿わない行動をする身体を抱え、だからこそ、一語一語を大切につづってきた重度自閉症の作家・東田直樹。 小学生の頃から絵本...もっと読む

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コメント

Kanaerror 泣くことって、すごくエネルギーが必要だけれど、言葉にできない感情を伝えられる術って、とても重要。 > 3年以上前 replyretweetfavorite