山内宏泰
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栄西と建仁寺」——風神雷神が花見にやってきた
桜のシーズンを迎え、いつも以上ににぎわう上野公園。実は、花見客だけではなく、あの有名な「風神雷神」もやってきています。東京国立博物館平成館で開催中の「栄西と建仁寺」展には、日本に禅宗を広めた栄西と彼がひらいた建仁寺にまつわる名宝がもりだくさん。花見がてら、古今の日本人が愛でてきた美術品を鑑賞してみてはいかがでしょうか?
お花見シーズンの上野公園は、にぎわいと華やぎに満ちていて、いるだけで気分が浮き立ってきますね。世の中の景気や情勢とは関係なく、少し大げさにいえば、生きている歓びを感じさせてくれる空間です。園内をそぞろ歩きながら、東京国立博物館へ向かいました。平成館で「栄西と建仁寺」展が開かれているのです。
栄西という名、日本史の授業でなんとなく聞き覚えがあるでしょうか。日本で禅宗を広めた高僧の名ですね。建仁寺は13世紀初め、その栄西が開いた禅寺です。いまも京都東山に広大な敷地を有して、多くの観光客を呼び寄せておりますよ。栄西と建仁寺にゆかりの美術を一堂に集めたのがこの展覧会というわけです。
展示はまず、栄西らの記した書や断簡などが並びます。平安~鎌倉時代という古いものですからね、一見して何が書いてあるのか、わたくしには分かろうはずもありません。それでもじっと眺めていると、のたうつ墨の線の一つひとつが、まちがいなく誰かの強い意思のもとに引かれていったということは伝わってきます。栄西をはじめ当時の書き手が、ちゃんと実在していたのだということを、改めてはっきりと知る思いです。

建仁寺ゆかりの名僧の彫像群。
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この連載について
山内宏泰
世に“アート・コンシェルジュ”を名乗る人物がいることを、ご存じでしょうか。アートのことはよく知らないけれどアートをもっと楽しんでみたい、という人のために、わかりやすい解説でアートの世界へ誘ってくれる、アート鑑賞のプロフェッショナルです...もっと読む
著者プロフィール
ライター。美術、写真、文芸その他について執筆。著書に『写真のフクシュウ 荒木経惟の言葉』(パイインターナショナル)『写真のフクシュウ 森山大道の言葉』(パイインターナショナル)『上野に行って2時間で学びなおす西洋絵画史』(星海社新書)『写真のプロフェッショナル』(パイ インターナショナル)『G12 トーキョートップギャラリー』(東京地図出版)『彼女たち』(ぺりかん社)など。東京・代官山で毎月第一金曜日、写真について語るイベント「写真を読む夜」を開催中。東京・原宿のスペースvacantを中心に、日本写真を捉え直す「provoke project」開催中。
公式サイト:http://yamauchihiroyasu.jp/