今から20年ほど前のこと。80代後半になった僕の祖母は、足元がおぼつかなくなりはじめていました。深く腰を曲げ、難儀そうに歩く後ろ姿を今でもはっきりと憶えています。
そんな祖母の晩年をなんとか過ごしやすく、かつ安全なものにしてやろうと母は四苦八苦でした。例えば電子レンジでご飯が炊ける炊飯器が発売されると、すぐに買ってきては祖母にプレゼントしていました。しかし、電子レンジでご飯を炊くという発想にどうにもなじめなかったのか、結局ほとんど使われることなく、台所の片隅で埃をかぶっていました。せっかく買ってあげた補聴器も「うるさすぎる」と結局使用せず。
そんなふうに祖母の面倒を見ていた母も、今はもう78歳の後期高齢者です。そんな彼女にMacBookを買ってあげたのが、もう7年ほど前でしょうか? そして、それから5年ほど後にはiPadを買ってあげると、パソコンよりもよほど使いやすかったらしく、それからは利用頻度がぐっと上がりました。アマゾンで買い物し、FacebookやTwitterで暇をつぶし、iBookで読書したりと、僕らの世代とまったく変わりません。
いまや「老人こそネットをするべき」が母の口癖です。歳をとれば体が不自由になり、出かけるのがおっくうになる。大雨や雪の日に外出して、転倒したくない。でもネットを使えば、お米でも洋服でも玄関先まで届けてくれる。遠隔地に住む孫や息子の顔も見れる。「老人こそもっとネットを使うべき」という言葉には、説得力があります。