プライドを懸けた静かな戦争

今回の林伸次さんのコラムは、バーで知り合った初対面のふたりに起きる、ある現象について。それは、いつものような恋愛にまつわる「出会い」ではなく、初めて会った男同士が意識的にか無意識にかやってしまう「どちらが偉い」という腹の探り合い。「あるある」と思わせてくれるエピソードばかりですが、林さんが伝えたい「どちら偉い」よりも大事なこととは?

どちらが上か、静かな争い

いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。

韓国人って初対面の人に「何年何月生まれですか?」ってすぐに質問するのは知っていますか?

というのは、儒教がまだしっかり根付いている国だから、どちらが先に生まれたかで目上と目下が決定するんですね。だから、一ヶ月でも後に生まれていたら目下になって一ヶ月先に生まれた人間に敬語で話さなきゃいけない、というわけなんです。これって、実際韓国人にとってみたら「古くさい習慣でイヤだなあ」と思っているようなのですが、僕から見ると「意外と合理的でわかりやすいシステムかも」と思うことがよくあります。

というのは、バーでこういうシーンがよくあるからです。

カウンターで隣になったお客様同士でたまたま話すことになって、会話が盛り上がりました。それが男性同士の場合、なんとなく「どっちが偉いのか」ということを値踏みする瞬間があるんですね。それはもちろん韓国人と同じように、「年齢」というわかりやすい価値基準で判断するときもあるのですが、他にも色々と価値基準があり、まるで犬が縄張り争いやマウンティングをするかのように、静かな争いが始まります。

よくあるのが「bar bossaにはよく来てるんですか?」とか、「bar bossaにはいつごろから来てるんですか?」という質問です。これ、おそらく言葉にしている人はなんとなくで言ってるんだと思うのですが、「常連だったり、ずっと昔から来ている方が勝ち」みたいな空気が立ち現れることがあります。

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ワイングラスのむこう側

林伸次

東京・渋谷で16年、カウンターの向こうからバーに集う人たちの姿を見つめてきた、ワインバー「bar bossa(バールボッサ)」の店主・林伸次さん。バーを舞台に交差する人間模様。バーだから漏らしてしまう本音。ずっとカウンターに立ち続けて...もっと読む

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コメント

nishiaratter 今回も、面白かった。 約4年前 replyretweetfavorite

keguri_naoko お店に漂っているであろう節度を保った親密さが感じられてほっこりするコラム 約4年前 replyretweetfavorite

sadaaki この人すごいなあ。目の前の相手とフラットにやりとりするには、謙虚さと自信の両方が必要ですよね。 4年以上前 replyretweetfavorite

matomotei ワスは吉野家に行くと、『つゆだく!』とか言ってるヤング(ヤング!)を見ると、「あー、ヤングだなぁ…」と割と冷たい目でみているよね(なんか、店側の好意を当然のモノと扱ってるトコがズーズーしいじゃないの) 4年以上前 replyretweetfavorite