春」第2回 — 青春には気をつけなよ

同年代の友人とのギャップについて考える少女、梢。イライラする日常を思い出しながらも、若き梢の乗った電車はいつも通り学校のある豊田に向かっていきます……
Twitterのフォロワー6万以上、日々トガったツイートで人々を魅了する鬼才、ダ・ヴィンチ・恐山。ウェブの世界を飛び出して大喜利やマンガでも活躍する彼が、品田 遊(しなだ・ゆう)として、初の小説連載をcakesで開始しました。(連載をまとめた単行本はリトル・モア社から刊行予定)

 もう文字の並びは全然頭に入ってこない。この小説に共感したり、スカートを上げたり下げたり、彼氏ができたとかで盛り上がったり、父親の悪口を友達に打ち明けたり、裁縫の授業で作ったやつじゃなくて自分で買ったエプロンを持参して調理実習に参加したり、「これ」を「此れ」と書いたりしている同年代のみんなは今、何を見ているんだろう。たぶん、それは思春期とか青春とかいうやつだ。

 このあいだ、お母さんがテレビを見ながらなにげなく言っていたことを思い出した。青春映画の予告編のCMが流れていた。

「梢、青春には気をつけなよ」

「え? 青春?」

「青春映画とか青春小説とか、あとロックのバンドが歌ってるでしょ、若者の悩みやら葛藤みたいなのを。でもね、あんなの青春だと思ったらダメよ。あれは全部、大人が作ってるんだからね」

「うん?」

「ああいうのは大人のみみっちい願望を架空の子供に言わせてるだけなのよ。あんたは本物の子供なんだから、そんな後悔みたいな青春に騙されたらダメ。わかった?」

「よくわかんない」

「よくわかんないなら、あんたまだ正真正銘の子供だ。大丈夫」

 お母さんはアハハと笑った。私はキョトンとしていた。

 今考えてもお母さんが言ったことの意味はよくわからないけど、子供扱いされても受け入れちゃう私がやっぱりまだ子供だってことはよくわかる。それはもう、自分じゃどうしようもないんだろう。そう考えると少し楽になった。

 私は本をバッグにしまって、ドア横に付いている縦長の手すりに後頭部を少し押し当てた。走る列車の振動が伝わってくる。こうやってから外を眺めていると、電車と呼吸が一体になったような感じがする。小さい頃からやっている遊びだ。景色が流れていく。その流れが緩やかになって、振動が収まる。

「立川、立川です」

 私の真横のドアが開いたら、そこに彩絵がいた。ショートカットに、赤いセルフレームの眼鏡。そしてやっぱりスカートは妙に長かった。

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品田 遊

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コメント

deli_zetto めちゃくちゃカワイイやんねー。 約4年前 replyretweetfavorite

kongumi |中央線に乗って|有実 泊 @d_v_osorezan |cakes(ケイクス) https://t.co/nKDzLCtlds 此れくそわろた いるいるいる 約4年前 replyretweetfavorite

dinosaurimpact 大人の思う子ども、ほんとの子ども 子どもって? 約4年前 replyretweetfavorite