道徳の時間

古市憲寿 vol.3 道徳の教科書はジャンプじゃだめですか?

未来社会をサバイブする岡田斗司夫さんが、 ゲストとともに様々な事例を引用しながら、 現代の「道徳」について考えていきます。 今月のゲストは古市憲寿さん。国民の統合は道徳でなくてもいいと言う古市さん。ふたりが行き着いた国民統合の救世主は、『週刊少年ジャンプ』!? ますます冴え渡る対談から目が離せません。

岡田 道徳以外で国民を統合する方法としては、どういうものがあるかな。

古市 たとえばiPhoneって、学歴とか関係なくみんな使ってるじゃないですか。iPhoneのような消費や欲望の快楽によって、国民をまとめることができるんじゃないかなと思うんですけど。

岡田 おおっ。まだその夢を捨てない。それは、20世紀末の夢だよ。快楽や利益の誘導での国民統合。

古市 まだ可能性はあるんじゃないかな。

岡田 利益誘導で、「ゴミ捨てるな」とかを徹底させるのって大変じゃない? 道徳でやる方がラクじゃない?

古市 たしかに、道徳はコストがかからないですよね。でも、たとえばゴミのポイ捨ての話なら、清掃業者の人ががんばれば、綺麗な状態は保たれます。ゴミ拾いが清掃業者の仕事になるから雇用も創出される。

岡田 ディズニーランドだ……なんかウソっぽい。それで大丈夫なのかな? みんながごみを捨てない町と、ディズニーランドシステムでゴミがない町だったら、僕は前者に住みたいなあ。

古市 逆に、なんで僕らは町にゴミを捨てないのかな。

岡田 僕のリアルな気持ちとしては、お天道さんが見てるからだね。情けない自分になりたくないからという一線がある。

ゴミは好きなだけ捨てて、拾う仕事をつくればいいという功利主義的な考え方をすると、その一線が壊れてしまう。環境破壊みたいなものです。道徳的なものの考え方というのは、代々受け継がれて来た文化遺産なんだけど、環境と同じで簡単に破壊できてしまうんですよ。言ってみれば文化破壊。

古市 なるほど。

岡田 ただ、そういう受け継がれてきたものだからこそ、壊したいという考え方が出てくるんですよね。僕はそれを「尾崎豊的」と言っているんだけど、つまり権威には反抗してみようという考え。でも、それに従ってみんなが窓ガラスをがんがん割った結果、窓ガラスがどこにもなくなってしまった。だから、僕はそろそろまた窓ガラスをはめなきゃいけないんじゃないかと思っている。

古市 それが「道徳」ということですね。どんな窓ガラスをはめるべきか以前に、はめるのが窓ガラスでいいのかから考えるべきだとは思いますけど。

岡田 そうそう。だから「道徳」という大ざっぱな枠にしているんです。
道徳の教科書を僕たちふたりで責任編集をするとしたら、何を書きたい? 何もないなら「ない」とすればいいし、「隣の人に迷惑をかけない」くらいは書いておこうというのでもいいよ。

古市 「隣の人に迷惑をかけない」ことだけを道徳として教えるにしても、それがどういうことなのかを言葉で説明する必要はありますよね。

道徳って、言葉で書けるのかな。僕が義務教育を受けていたとき、道徳の教科書はすべてストーリー仕立てでした。つまり、一般的な言葉では道徳を教えることができないってことだと思うんです。

岡田 僕のときもそうでしたね。僕の前の世代になると、歴史上の人物の話になる。楠木正成が忠義を尽くした話とか。

古市 物語で教えるしかないんですね。

岡田 むしろ、世の中のフィクションに道徳が詰まっているとも言えますよね。『ワンピース』だって道徳じゃないですか。

古市 ワンピースは、本当に道徳のかたまりですよね。勧善懲悪ですもん。

岡田 ああ、いま気づいた。オタクって保守的な人が多いんですけど、あれって勧善懲悪の話にどっぷり浸かってきたからかも!

古市 (笑)。じゃあ、道徳の教科書なんて作らなくて、『週刊少年ジャンプ』を読ませればいいんじゃないですか。

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道徳の時間

岡田斗司夫

評価経済など新しい資本主義が加速しはじめた21世紀。 そんな新時代の「道徳」とは、一体どんなものでしょうか。 未来社会をサバイブする岡田斗司夫が、 ゲストとともに様々な事例を引用しながら、 現代の「道徳」について考えていきます。 (月...もっと読む

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