今の就活は、自分でも「困る」
—— 第7回で、起業する人が増えると競争が激しくなって成功確率が下がるという話が出ました。少し気になるのが、単純に数で言うとサラリーマンのほうが多いので、サラリーマンはより競争が激しくて大変ということになりませんか?
川上量生(以下、川上) そんなことないですよ。数が多いのと競争が激しいのは違います。起業みたいに、もともと厳しい競争にさらされる環境で人が増えたら、さらに競争が激しくなります。でも、サラリーマンは会社に入ってしまえば、そんなに競争は求められません。まあ、多少の出世競争はあるかもしれませんが。
—— なるほど。
川上 その代わり、入社するとき、つまり就職活動は大変ですよね。みんな一斉に競争させられるので。今は、コミュニケーション能力と学歴で採用されるかどうかが決まる会社が多いと思うんですけど、これがどっちもない人はつらい。
—— いま、就活で悩んでいる学生は多いですよね。資格や専門技術・知識を持っている人はいいけれど、普通の文系の大学生は今、どこに就職したらいいのでしょうか。
川上 うーん……。いや、むずかしいんじゃないですか。
—— むずかしい。
川上 むずかしいです。だって僕がいま就活生だったとしたら、これといった解がないですもん。
いま日本で就活生に人気がある企業といえば大企業でしょう。でも今は、大企業だってつぶれたり、合併したりしてなくなる時代ですよね。そうなると、やっぱり親方日の丸かということで、公務員という選択肢もある。でも、日本はいまGDPの何倍もの借金を抱えていて、いずれ破綻することが確実じゃないですか。
—— 確実(笑)。
川上 今年就職する人は、65歳が定年だとするとまだ43年くらい先があるわけですよね。43年もあったら、日本は絶対破綻しますよ。そんな財政状況だと、当然公務員への風当たりもきつくなりますから、この先公務員が安泰だとも限りません。
こうなってくると、どこが最善の選択肢かなんてわかりませんよね。いっそ農業のほうがいいかもしれない。
—— 本当にそうですね。
川上 でも農業だってTPPで自由化されたら、ビジネスにならなくなる可能性もある。リスクがないものが、こんなにわかりにくい時代ってないですよ。だから、僕は起業よりは就職したほうがいいと思うけれど、就職したからって安泰とはとても言えないと思っている。
僕が就活生だったら……、ほんと困りますよね。
—— 困るとしか言いようがない状況だと。
川上 それでもまあ、大企業は比較的ましかな。ベンチャーなどに比べたら、つぶれる順番はより後のほうだと思います。つぶれないとは言いませんけど。
—— 若いうちにベンチャーに就職していろいろな業務経験をつんで、転職していくというキャリアもありますよね。
川上 うーん、でも転職市場で、ベンチャーで働いた経験やつぶれたベンチャーの経営陣にいた経験って、プラスになりますかね。上場寸前とかまでいったらプラスになる可能性はあるけど、そういう経歴を聞いた時の大多数の感想としては「ざまあみろ」ってところじゃないでしょうか。
—— ざまあみろ(笑)。それって、川上さんの意見じゃなくて、みんなの意見ってことですよね?
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