神を超えようとした男

自殺という行動は、つらいことに目を向けない「逃げ」のようにもとれるものです。しかし、K君にとっては、「生きること」や「夢」、そして「神」という存在から自由になるための、きわめて前向きな救いの手段でした。自殺を希望と考える哲学は、あの古典小説にも登場していました。

「死ねば楽になる」は本当か?

 結局、誰がどんなに説得しても、彼に死の魅力以上のなにかを提示することができなかったのです。 
 僕たちは、いろいろなことを話しました。
 生きていれば楽しいことはあるか?
 死んだら悲しむから自殺すべきではないのか?
 なんでもできるとしたらなにをするか?
 16歳のときに出会ってから23歳までの7年間、Kはなんとか生きていました。
 それでもやはりKは納得できなかったようです。
 あのとき、どういう台詞で説得すればよかったのだろうか。今も考えますが、おそらく僕がそんなことを考えること自体が、Kにとっては「どうでもいい」ことなのでしょう。 
 彼にとって、生きるか死ぬかの問題とは徹頭徹尾、自分の問題であって、社会や他人の手を借りて解決するような問題ではなかったからです。

 そんな彼が死んだときに脳裏に浮かんだのは、1冊の本でした。

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頑張って生きるのが嫌な人のための本

海猫沢めろん

年間3万人前後もの人が自ら死を選ぶ自殺大国・日本。ゆたかな国にも関わらず、根強くはびこっている閉塞感と生きにくさ。海猫沢めろんさんの友人・K君は、そんな閉塞感から自由になるために自殺を選択しました。めろんさんが、K君に、そして彼とおな...もっと読む

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