「死ねば楽になる」は本当か?
結局、誰がどんなに説得しても、彼に死の魅力以上のなにかを提示することができなかったのです。
僕たちは、いろいろなことを話しました。
生きていれば楽しいことはあるか?
死んだら悲しむから自殺すべきではないのか?
なんでもできるとしたらなにをするか?
16歳のときに出会ってから23歳までの7年間、Kはなんとか生きていました。
それでもやはりKは納得できなかったようです。
あのとき、どういう台詞で説得すればよかったのだろうか。今も考えますが、おそらく僕がそんなことを考えること自体が、Kにとっては「どうでもいい」ことなのでしょう。
彼にとって、生きるか死ぬかの問題とは徹頭徹尾、自分の問題であって、社会や他人の手を借りて解決するような問題ではなかったからです。
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