1943年、ポル・ポトはプノンペンの名門・シソワット高級中学の受験に失敗。その後に同校になんとか編入したものの、進級試験に落第して木工作業の専門学校に進んだ。
宗主国のフランスが教育水準の引き上げに無関心だったため、当時のカンボジアでポル・ポトと同水準の学歴を持つ人間は数千人しかいなかった。だが、学業の機会を得られたのは王室との関係が深かったためで、彼が特別に優秀な人材だったからではなかった。
この中学時代、ポル・ポトは第二次世界大戦を経験する。戦争は彼自身の生活にそれほど大きな影響を及ぼさなかったが、1945年春に日本が一時的にカンボジアを「独立」させた際、黄色人種の日本人が従来の支配者だったフランス人たちを逮捕・拘束したことは、多くのカンボジア人に衝撃を与えた。日本の場当たり的な政策の結果とはいえ、カンボジアが仮にも独立を経験したことで、ナショナリズムを刺激された人も多かった。
思春期のポル・ポトも、その一人であった。
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