あとには引けなくなって、ゴールドマン・サックスに入社
藤野 高校時代は勉強しかしていなかったということでしたが、大学時代はどうだったんですか?
仲 これがまったく勉強しませんでした(笑)。もともとすごく社交的な人間で、クラスでもみんなとワイワイやるのが好きだったんですよ。でも高校で留学したら、英語ができなくて引っ込み思案になった。だから勉強に明け暮れていたんですが、日本に帰ってきてまたソーシャルな方向に戻ったんですよね。
藤野 どんな活動をしてたんですか?
仲 起業サークルをつくって、中小向けのホームページ制作会社を立ち上げました。また、ミス・コンテストの企画を立ち上げてその実行委員をやったり、大学生向けのフリーペーパーを制作したり、いろんなことをやってましたね。そういう学生って結構多いと思うんですけど。
藤野 大学を卒業してすぐ起業しようとは思わなかったんですか?
仲 3年生くらいまでは、就職しないで自分で何かやれたら、と思っていました。でも、自分たちでつくった会社が、どこに向かえばいいかわからない状態になったんです。それで、そこから逃げて就職したいという気持ちも出てきました。
藤野 その会社は、なぜ方向性を見失ってしまったんでしょう。
仲 目的がなかったからでしょうね。それが失敗の原因でした。世の中には、起業自体が目的になってもいい、という人もいます。とにかくチャレンジしてみろと。でも私は、それだとつらいときに踏ん張れなかった。私の場合は、おもしろくないとがんばれないということがわかったんです。おもしろいことやるための手段として会社をつくるならいいのですが、会社をつくることを目的にはできない。それでもう、起業はやめよう、と思いました。
藤野 そこからゴールドマン・サックスに就職したんですよね。その理由は?
仲 世界一優秀な人たちがいる環境で働いてみたい、という思いがあったからですね。一方で、「就活」自体が手段ではなく目的化して、レースのようになっていたのもたしかです。
藤野 今の就活でも、そういう学生は多いですね。
仲 入社してから、就活、ひいては職業自体が手段だと気づくんですけど、入ってみないとわからないものですよね。私はそもそも金融に興味がなかったのですが、一緒に働くメンバーに惹かれたのと、世界ナンバーワンの企業で働いてみたいと思って入社したので、余計そう思いました。
藤野 ゴールドマン・サックスで働く、という体験はどうでしたか?
仲 すごくいいところでした。みなさんすごく優秀で、企業としてのカルチャーも素晴らしかった。ナンバーワンであることの誇りをみんな持っていて、全力でコミットするんですよね。でも、入社して半年くらい経ったときにリーマン・ショックが起きて、社内の雰囲気が一変してしまったんです。入社の決め手だったチームメンバーも、次々と辞めてしまった。
藤野 当時はそうだったでしょうね。劇的な変化だったと思います。
仲 もし、リーマン・ショックがなかったら今でもゴールドマンで働いていたかもしれません。それくらいチームは好きでした。先輩方のことは、今でもすごく尊敬しています。あのメンバーで、金融ではなく映画やウェブサービスをつくるとなったら、今だって、めちゃくちゃやりたいです。
漫画を描くために北海道に引きこもった
藤野 それでゴールドマン・サックスを辞めてから、今度は漫画を描くために北海道に移住されたとか。またすごい転身ですね(笑)。マンガはいつから描いていたんですか?
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