第13回】アップル・ピーク説の真贋 残る課題と次なる戦場

ジョブズ亡き後のアップルは
どうなる?

瀧口範子(たきぐち・のりこ)/ジャーナリスト 上智大学外国語学部卒業。シリコンバレー在住。ハイテク、ビジネス、建築・デザイン、文化、社会一般に関する記事を執筆。スタンフォード大学工学部コンピュータ・サイエンス学科で客員研究員を務める(96~98年)。

 さる9月21日、熱狂的な期待感の中で発売された新型iPhone5。発売当日、全米のアップルストア前には恒例の長蛇の列ができ、アップルへの根強い人気を証明した。だが、その一方で「アップル・ピーク説」がささやかれ始めていることも無視できない。

 アップルの成長もここ止まりではないかとされる理由の一つは、iPhone5にも搭載され、それと同時に配布されたiOS6でお目見えしたアップル・マップの不出来ぶりである。アップルはこれまでiPhoneやiPadに標準搭載してきた競合グーグルのマップを排し、自社製のマップに置き換えた。ソーシャルネットワークやローカル情報によって今後大きな収入源となる地図アプリを、ここで自社の下に引き寄せておく必要があったからだ。

 ところが、結果は散々。マップの表示が粗い、あるべきものが表示されない、住所に間違った名前が出てくるなど、世界中で不満が噴出した。

 業界専門家は、アプリの不具合の向こうにもっと大きな問題を指摘する。「もしスティーブ・ジョブズがいたら、こんな不完全なものを世に出しただろうか」。つまり、完璧主義を徹底して社内を統制していたジョブズ亡き後のアップルのほころびが、このマップの不手際によってあらわになっているというのだ。

 iPhone5自体の革新性が不十分、という見方もある。スクリーンも美しく大きくなり、速度も速くなり、スマートで軽量になった。しかし、これまでのアップル製品にあったような「ゲーム・チェンジ」を起こすような新しさはなかったというのだ。

 アップルが世界中で繰り広げている特許侵害訴訟も、アップル・ピーク説を裏打ちする一つとみる業界関係者も少なくない。自己防衛に走り、守りを固め始めたということは、アップルがもはや成長期を過ぎたことの他でもない証しだというのだ。

 ただ、こうした懸念は見え隠れするものの、アップルが世界最大規模の企業に成長したことは事実だ。今年だけでアップルの株価は74%も伸び、同社の時価総額は今年8月末に6235億ドルとなった。時価総額は今でもさらに伸び続けており、マイクロソフト、グーグル、アマゾンの3社の合計よりも大きくなっている。

 大騒ぎで新規上場を果たしたフェイスブックの株価が低迷しているのと比べると、ハードウエアという存在感のある確固としたビジネスで快走を続けるアップルは、米国の製品作りの星ともいえる。しかも、スマートフォン市場でアップル機器が占める割合は17%であるにもかかわらず、利益ではノキアやサムスン電子、LG電子などを抑えて全体の39%ものシェアを誇っている(キャナコード・ジェニュイティおよびIDC調べ)。利益率の高いビジネスモデルの確立に成功していることがわかる。

 だが、今後テクノロジーの重心がハードウエアから離れ、デジタルコンテンツ、クラウド、プラットフォームという領域に移行していった際に、アップルは依然勝ち続けることができるのか。それは別問題だ。

 アップルの収入のうち、現在iPhoneやiPod、iPadなどのモバイル機器が占める割合はすでに半分を超えている。アップルのビジネスがモバイル中心へと変化したのは、消費者自身がパソコンからモバイルへと移行していることの反映に他ならない。だが、モバイルが行き渡ったとき、次の闘いはその機器を通して利用するコンテンツやサービスに移っていく。

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日本を呑み込むアップルの正体【4】~栄華はいつまで続く? アップルの向かう先

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日本と同様、米国経済もまた、アップル頼みの様相を呈している。史上最高の時価総額をたたき出した米国を代表するハイテク企業の行く末に、政界も産業界も、一般投資家も興味津々だ。※この連載は、2012年10月6日号に掲載された特集を再編集した...もっと読む

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