それは動物に限らない。たとえば、ペイズリー柄がそうだ。バンダナの模様としてすっかり定着しているが、私には病原体にしか見えない。少しでもよく見ていたらあんな柄を使おうとは思わないはずだ。
イチゴもよく見ると気持ち悪い。まずあの赤さが異常だし、無数の窪みの奥に小さい種が埋まっているのを見ると鳥肌が立つ。スイカの断面も赤さと種の配列が不気味で、長いあいだ見ていられない。メロンの表面の網目模様もまるで神経が通っているようでぞわっとする。中心にジュクジュクの種がみっしりと詰まっているのも嫌だ。
気持ちの悪いものはそこらじゅうに溢れている。サンゴ礁・米がつかないしゃもじ・蓮根・マンガに出てくるたんこぶ・点描・ウーパールーパー・銀河系・もつ煮・ザクロ・刺繍の裏地・クリオネ・ピザ・頭だけ異様に大きいプロ野球選手のフィギュア・防音室の壁・ミカヅキモ・坊主の後頭部・ちらし寿司・うろこ雲・盲人用ブロック・マスゲーム・心臓マッサージ練習用のマネキン・仏像の頭・プリクラで拡大された目・キノコ・皮膚に残る畳の跡・ヒマワリなどなど、そういうものたち。どれもなんとなく眺めているぶんにはいいのだが、見ているうちにディティールの生々しさが薄気味悪く見えてくる。神は細部に宿るというけれど、だとすれば神はグロテスクな姿をしているに違いない。
私は恭一に訊ねてみた。
「あのさ、ペイズリーって気持ち悪くない?」
恭一は数回まばたきをした。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。