第3回】熱血指導至上主義のヤンキー教育

精神科医・評論家の斎藤環の新刊『ヤンキー化する日本』が3月6日より発売開始! 本連載では書籍に収録した小説家・海猫沢めろんさんとの対談を全文公開! 第3回では、「スパルタ教育」を受けてきたという海猫沢さんが、教育現場をとりまくヤンキー精神について語ります。

「反知性主義」とスパルタ

斎藤環(以下、斎藤) ソーラン節、金八先生の文脈でいけば、戸塚ヨットスクールにも触れておきたいですね。戸塚ヨットスクールを題材にした映画に『スパルタの海』というものがあって、それを観るとわかりやすい。伊東四朗さんが主演の素晴らしい作品なんですけど、そこで行われていたこと自体はひどいというかなんというか……。当時は引きこもりを「閉じこもり」と呼んだんですが、そういう不登校児や非行少年を監禁型の更生施設に入れて鍛えていく。その中で訓練生が死んでしまうんです。


海猫沢めろん(以下、海猫沢) 『爆音列島』*1という漫画でもネタになってますね。この漫画は、東京80年代暴走族記録、という側面もあるんですが、戸塚ヨットスクール*2に似た施設に仲間の一人が入れられて、助けに行く話があるんです。
*1 爆音列島 二〇〇二年から一二年まで『月刊アフタヌーン』に連載されていた髙橋ツトムの漫画作品。主人公タカシが暴走族に入って引退するまでが描かれている。
*2 戸塚ヨットスクール 一九 七七年に戸塚宏が設立したヨットスクール。スパルタ式の指導方法が注目を集めたが、生徒の死亡事故、行方不明事件が明るみに出て、戸塚宏やコーチらは有罪 判決を受けた。『スパルタの海』は一九八三年の作品。当時は上映中止となったが、のちにビデオ化、再上映された。

斎藤 戸塚理論では、脳幹の機能が低下すると引きこもりなどの問題行動が出るが、ヨットをやって脳幹を鍛えれば更生できるとされていて、そのための指導をしていることになってるんですね。日本の精神医療が家庭内暴力や引きこもりを扱わなかった時代が長かったので、隙間産業としてこういうタイプの矯正施設のニーズが高まっていったわけです。スパルタタイプの更生支援施設というのはたくさんあって。長田百合子がやっている長田塾*3なんかもそこに分類されますね。
*3 長田塾 一九八八年に長田百合子によりつくられた「引きこもり更生施設」。親を対象とした「長田塾」もある。

斎藤 それらの系譜に共通する最大の特徴は「反知性主義」です。〝理屈をこねていてもしょうがない〟〝とにかく真心と誠実さで当たっていけば人は変わる〟みたいなことで、理論をかなぐり捨ててアツくなっていく。 この反知性主義を世間に浸透させたのが金八先生やヤンキー先生なんだと思います。金八先生は自分のプライベートな時間などは度外視して、体当たりで子供の指導をしていく。そういう課外的な部分ばかりが強調されていて、普段の授業がどういうものだったかはよく覚えてないほどです。

海猫沢 金八先生は国語の先生ですね。「親という字は木の上に立って見ると書きます」みたいに漢字の話でよく説教をしてました。

斎藤 それが芸のようになって、そのキャラクター性が受けていた。その後、『GTO』とか『ごくせん』とかヤンキー色のつよい教師モノが出てきましたが、反知性主義、体当たり的な熱血指導という点では共通していました。〝理論は熱の前に敗れ去る〟という大前提が教師モノでは連綿と続いている。

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ヤンキー化する日本 斎藤環×海猫沢めろん

斎藤環 /海猫沢めろん

合いとノリ、母性に絆、バッドセンス。日本人は急激にヤンキー化している! 現代日本に巣くうヤンキー性を村上隆、溝口敦、與那覇潤、デーブ・スペクター、海猫沢めろん、隈研吾と徹底対論!

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uminekozawa いつから日本はヤンキー大国になったのか? 3年弱前 replyretweetfavorite

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