大人ってだけで傷つけてもいい存在だと思っていた
—— 2年ほど前のデビュー当時と今の自分を比べて、変わったと思うことはありますか?
家入レオ(以下、家入) こうやって大人の方々と話せるようになったことです。
—— 前は話せなかった?
家入 大人の方には申し訳ないんですけど、大人っていうだけで傷つけてもいい存在だと思っていました。福岡にいた頃は特にひどかったですね。
—— なにか原因はあるんですか?
家入 あるとき、大人に「勝ち方」じゃなくて「負け方」を教えられたことがあって。その頃の自分は、大人はかっこいいものなんだと漠然と思っていたから、そんなこと言うんだって、すごくショックでした。
—— 大人は間違ったことをしないと信じていたのに、裏切られたような気持ち?
家入 そうですね。そんなこともあって構えていたせいか、デビュー当時、プロフィールを制作することになって、好きな食べ物や身長をいろいろ聞かれたんですけど、どうして初めて会った人に自分のことを教えないといけないんだろうと思って、何時間も押し黙ったりして……。だけどそんなとき、大人の方が「大丈夫だよ」と言ってくれたんです。
—— 上京したての頃ですね。
家入 はい。福岡ではそうやって自分のことを守ろうとすると、大抵は面倒くさがられて「じゃあもう帰っちゃっていいよ」みたいに言われることが多かったんです。だけど「大丈夫、ゆっくりでいいよ」と言われたことで、そこから一歩進むことができました。
大人にも子どもにも、いい人や悪い人がいるし、大人というだけでひと括りにしちゃダメだっていう単純なことに気がついたんです。そこから少しずつ大人とも話ができるようになったのかもしれません。
—— 明るいときと暗いときの差が激しいそうですが、そういった感情との付き合い方で変化した部分はありますか?
家入 とりあえず押し黙るのはやめようと思いました。それまではこちらの気持ちを言うことが悪いことだと思っていたし、それなら自分が我慢すればいいと思っていたんです。だけど「言ってもらわなきゃ、周りもわかんないよ」と言われて、つたなくてもいいから自分の言葉で伝えようと思えるようになりました。
宿題がなくなったのがすごくうれしい(笑)
—— 高校を卒業されて、生活そのものや音楽に対する思いは変わりましたか?
家入 卒業をすると日々の生活でいっぱいいっぱいになっちゃうから、自分にとって大切なものがより見えてきました。圧倒的に音楽に時間を割いているので、やっぱり自分にとって音楽は大切なんだなあと改めて実感しています。
—— じゃあ卒業したことはうれしいですか?
家入 宿題がなくなったのがすごくうれしいです(笑)。
—— でも高校を卒業すると、それこそ大人にならなきゃというふうに思ってしまうのでは?
家入 大人になろうとは思うけど、「ならなきゃ」っていう感じはないんです。「社会人なのだからもう大人だよ」とまわりの人に言われつつ、新しいアルバムを作るまでは「子どもです」って言い張っていました(笑)。
—— 19歳の今は、シンガーソングライターとしてどんな時期だと思っていますか?
家入 どの時期にもいえることだけど、今だからこそ歌えるものを歌っていきたいという思いが一番強いですね。
—— デビューから今まで、どんな2年でしたか?
家入 感覚的には、1週間くらいの勢いでした(笑)。この2年で本当にいろんなことを学ばせていただきました。“愛”って伝えることが一番の行為だと思っていたけど、伝えないことも愛なんだと思うようになったし。
言葉で相手に言うことって、ある意味簡単だと思うんです。だけど私にははっきりと口にせず、至らないところを自分で気づけるようにしてくれた大人の優しさを、今は身にしみて感じています。それって相手を信じないとできないことだと思うから。
執筆:兵藤育子、撮影:高柳悟
さらなるインタビューが、dmenuの『IMAZINE』でつづいています。
「オトナを嫌いな私が大人になろうと決意した理由」家入レオ
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