能町みね子
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牛込の加寿子荘」第二十九話
四十~五十代と思われる中年男、背中から腰まである長髪、内田裕也を思わせる顔つきと皮膚の質感……。「二階左」の部屋に住む謎の住人・サトルについて。 築40年を超える「加寿子荘」での生活風景。能町みね子の自叙伝風小説!
サトルについて。
サトルは、私よりも前から住んでいる加寿子荘の住人です。
細かく言うと、私が最初に二階手前に住みはじめたときにはいなかったのだが、私が一度出て、戻ってきた時には既に風呂なしの「二階左」の部屋にいた。
これまであまりエピソードがなかったのは、サトルの生態がまったくもって謎に包まれていたからである。
実は彼は加寿子荘でもっとも得体のしれない人物であります。 四十~五十代と思われる中年男、背中から腰まである長髪、内田裕也を思わせる顔つきと皮膚の質感、そして風呂ナシの部屋に住んでいる。この要素の時点で、ちょっと不安が押し寄せます。
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この連載について
能町みね子
築40年を超える「加寿子荘」での生活風景。能町みね子の自叙伝風小説!
著者プロフィール
漫画家。北海道出身、茨城県育ち。 著書は『くすぶれ! モテない系』(ブックマン社)、『縁遠さん』(メディアファクトリー)、 『ときめかない日記』(幻冬舎)、『お家賃ですけど』(東京書籍)、 『ひとりごはんの背中』(講談社)、『お話はよく伺っております』(エンターブレイン) など多数。雑誌やネット媒体での連載も多くかかえる。 フジテレビ系『久保みねヒャダこじらせナイト』に出演するなど今大注目の作家。
Twitter :@nmcmnc