ジブリもニコニコ動画も博打なんかじゃない
—— 前回、頭のいい人は楽をしようとして、バカな人は夢を追いかける、という話が出ました。そこで思ったのですが、ジブリの鈴木敏夫さんって、会った人がみんな「頭がいい」っていうんですけど、アニメーション製作という夢を追いかけている、いわば巨大な博打のようなことをしているわけですよね。それはどういうことなんでしょうか。
川上量生(以下、川上) 鈴木さんは、めちゃくちゃ論理的な人ですよ。博打のようにみえるかもしれませんが、あれは博打じゃない。全部計算ずくでやってます。
—— そうなんですか!
川上 世間的には博打に見えることを成功させるのって、わくわくしますよね。鈴木さんはそれがおもしろいからやってるだけです。博打に見えることを成功させるというのは、賭けに確実に勝つということです。「賭けに勝つ」ということは、「賭けをする」ということとは違う。サイコロを振るということではなくて、サイコロで勝つ目を出す、ということです。それを論理的に考えてやっているのが鈴木さんです。
—— 博打のように見えて、論理的に先を予測してやっているんだと。
川上 そうです。僕と鈴木さんは、本能に近いところまで突き詰めて、理詰めで考えていくところが似ているんです。人間としては別にそれほど似てないと思うんですけど、考え方はめちゃくちゃ似てる。僕も、ニコニコ動画を始めたことは博打だともなんとも思ってませんからね。
—— ニコニコ動画も、最初はすごい赤字で、はたから見ると博打を打ったように見えていました。ああいうユーザーがコンテンツをつくっていくCGM(Consumer Generated Media)のサイトは、最初にユーザーが集まると広がっていくけれど、そうならないと成立しない。鶏と卵のような関係で、ユーザーが増えるかどうかはやってみないとわからないところがありますよね。そこは心配されてなかったんですか。
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