前編】仕事とプライベートの境目はどこにある?

起業家の家入一真さんと経済ジャーナリストの木暮太一さんが、「働き方」について考える特別対談。前編は、お二人の実際の働き方の話から。休みなく原稿や仕事に取り組んでいる木暮さん。一方で仕事を他の社員に任せ、昼間っからビールばかり飲んでいたという家入さん。一見対照的に見えるお二人の働き方の、ある共通点とは?

「働く」ってどういうこと?

木暮太一(以下、木暮) 今日は「働き方」をテーマに家入さんと語ろうということで、こんなにたくさんの方に来ていただきました。ありがとうございます。さっそく、本題に入りたいと思いますが、家入さんにとって、働くってどういうことだと思われますか?

家入一真(以下、家入) 僕は、最近思うんですけど、やっぱり仕事って尊いですよね。幸せになるためには働かなくてはいけないって、よく思うようになったんです。例えば、僕は今、起業家という仕事をしていて、事業を立ち上げるところまでは、仲間と一緒にやるんですけど、立ち上げた後の具体的な業務は、ほとんど人に任せてしまうんです。すると、周りの人がやってくれるから、何もすることがなくなってしまって。それで、自分は昼間っからビールばっかり飲んでいて(苦笑)。それでもお金が入ってくるという状況になってしまうんです。

木暮 ハハハハ……(笑)。うらやましい。

家入 でもね、そうしたらどうなるかっていうと、たぶん、人は病むんですよ。昼間からビールを飲むだけの生活をしていると、辛くなってくるんです。働くことって、お金を稼ぐっていうことだけじゃない、そう思っています。

木暮 以前、ネットで「働いたら負け」なんて言葉が流行ったことがありましたけど、「負け」って言う人たちは、何と戦っていたんだろうって、すごく考えさせられたことがありました。
 先日、刊行になった本なんですけど『カイジ「勝つべくして勝つ」働き方の話』(サンマーク出版)には、そういう人たちへの僕なりのアンサーも込めて、少し厳しいことを書きました。
 たしかに、お金を稼ぐ方法はいろいろあっていい。でも、どんな方法を選んだとしても、必死でやらないと、先がないんだよって。家入さんのご著書『15歳から、社長になれる』(イースト・プレス)を読ませていただくと、家入さんは、すごい優しいなって思うんです。自分のメッセージをやわらかく伝えようとしていますよね。

家入 木暮さんの本、すごい売れてますよね。たしかに厳しいことが書いてありました。僕、読んでいて耳が痛かったですもん(笑)。

木暮 ハハハハ……(笑)。でも、伝え方は違うけど、最終的な主張は僕らは似ているって思ったんですよね。家入さんは、今日のタイトルにもあるように、これからの世の中で、負けないように生きていくためにはどう働けばいいと思いますか?

生活費の最低ライン、知ってる?

家入 僕は、働くことは、自分の「居場所」をつくるっていうことだと思うんです。僕がずっと自分の本の中で言っていることは、収入を分散させること。それはつまり、自分の「居場所」を増やしていくっていうことなんです。今の仕事を辞めたりしなくても、土日とか、夜の時間を使って「居場所」を増やしていくことはできると思うんです。そうやって「居場所」を増やしていってから、今の会社を飛び出して、起業するっていう選択肢もあると思う。
 会社に限らず、ここにいれば絶対大丈夫! っていうことは、今の時代ないと思います。だから「絶対大丈夫!」って思ってしまうと痛い目を見る。どんなことが起こっても、自分は生きていけるっていう場所をつくっておくのが、「勝ち」ということなんじゃないかな。

木暮 元博報堂の社員だった、中川淳一郎さんにおうかがいした話なんですが、博報堂をやめるときに、自分がいくらあったら生活していけるかということを計算したそうです。それで、9万円あれば生きられるという結果が出たそうです。

家入 中川さん、襟がのびのびになったTシャツ着てますけどね(笑)。

木暮 いつも同じ格好ですよね(笑)。でも、この考え方って僕はすごく大事だと思っていて、自分の生活費の最低ラインを知っておくと、人間ってすごく強くなるんですよね。

家入 ほんと、大事なことですよね。

木暮 自分の生活費を知っていれば、焦ったり、追い込まれたりしている感覚がずいぶんと減るんです。でも、僕がこれに加えて大事だなと思うのは、「絶対にゆずれないお金」というのは残しておく。たとえば、家入さんの場合だったら、ビール代を削ったら、人生自体が意味のないものになってしまうと思うんですけど(笑)。

家入 そうです。そのとおりです(笑)。そして、自分で決めなきゃいけないというのも大事です。「最悪、実家に帰ればいいか」と思っている人と、「絶対に実家には頼れない」という人じゃ「いくらいるのか」は違うはずだから、誰かの真似とか考えじゃなくて、自分の感覚で決めていかないといけないんですね。

ワークライフ・バランスなんて言っている余裕はない

木暮 居場所をたくさんつくっておくということが大事だとおっしゃっていますが、僕もそれは同感で、今の時代、ひとつの会社に勤めていて、収入を上げるということは、とても難しいと思います。
 家入さんのおっしゃる「居場所」というのは、つまり、収入源とも考えられると思うんですけど、これからの時代、2つ以上の収入源を持つことが大事なのかなと。でも、こういうことを言うと「具体的に何をすればいいのかわからない」という人が多いんですよね。なんでもいいからとにかくやってみたら? って僕は思っているんですけど。

家入 たしかに、「目標とか夢がありません」という人が多いです。僕ね、夢なんか持たなくていいよってよく言うんです。「ホテル王になりたい」とかいう夢を持っていても、「じゃあ、その夢のために今、何をしているの?」って聞くと答えられない人がいる。夢の話をすることよりも、今、自分ができる行動をしているほうが大事だと思います。動いていれば次につながるよ。居場所ができて、それが収入源になるかもしれない。そんなふうに話すんですけどね。

木暮 僕が最初にやった仕事って、参考書を自分で書いて売ることだったんですよね。大学のコピー機で原稿を何百枚もプリントして、自分で製本して、それを旅行かばんに入れて大学周辺の本屋さんに売り込みに行ったんです。今、僕は、自分の出版社を持っているからわかるんですが、こんなの完全にダメなビジネスモデルですよ。でも、僕がサイバーエージェントで働くことになったとき、任されたのは出版事業だった。この大失敗した経験を買ってもらえたんです。結果的に、この事業でドラマにもなった『実録鬼嫁日記』(アメーバブックス)などのベストセラーや、社長の藤田さんの本『渋谷ではたらく社長の告白』(アメーバブックス)を世の中に送り出す経験もできました。

家入 目の前の点を一生懸命やってみることですよね。そうしたら次にやることが出てくる。就職活動で悩んでいる人もいるけど、会社なんて、入ってみないとわからないことがたくさんある。最初からやりたいことを仕事にしている人なんていないんじゃないかな。その仕事を楽しくするかどうかは、結局、自分次第だと思います。

木暮 よく人から、「木暮さんの休みっていつですか?」って聞かれるんですけど、いつだろうなって思ってしまうんです。時間があれば、原稿を書いているし。家入さんもそうじゃないですか?

家入 たいてい、誰かとビールを飲んでいて仕事がはじまるし、ビールを飲むことが仕事なのかな?って思ったりします(笑)。プライベートと仕事の境目は、もうずっとありませんね。そういうこと聞く人って、仕事=辛い、プライベート=楽しいっていう固定概念があるんじゃないかな。僕にとっては、仕事って楽しいものだから、そこに線引きする必要がないというか。
 月曜日に自殺をする人が多いって聞きます。これは、土日になったら好きなことができる、月曜になったら辛い仕事がはじまる。そう思い込んでいるから死にたくなっちゃうんだと思うんですよね。「今日が何曜日かわからない」というような生き方をしている人は死にたくはならないと思うんですけど。

木暮 「好きなことを仕事にしているから、休む暇がなくても頑張れるんだ」なんて言われますけど、僕は別に、好きなことをしているから頑張っているんじゃないんですよね。やりたいことがやれる自分になるためには、頑張らないといけない時期っていうのがあると思うんです。

(後編につづく)

※本対談は2013年末に、サイバーエージェント「SHAKE100」で開催されたトークイベントの内容に加筆してまとめたものです。

この連載について

人生で勝つための「働き方」とは?—家入一真×木暮太一対談

木暮太一 /家入一真

先の東京都知事選出馬で話題になった起業家の家入一真さんと、新進気鋭の若手経済ジャーナリスト、木暮太一さんが、2013年末に「働き方」をテーマにしたトークイベントを行いました(サイバーエージェント「SHAKE100」主催、2013年12...もっと読む

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コメント

jyu_suke そう。最低限必要なお金を知ると楽になるよね。 https://t.co/pQ3W8gLNCL 1年以上前 replyretweetfavorite

trich_japan 「自分がいくらあったら生活していけるかということを計算したそうです。それで、9万円あれば生きられるという結果が出たそうです」「自分の生活費の最低ラインを知っておくと、人間ってすごく強くなるんですよね」 https://t.co/osl0UBVn94 約3年前 replyretweetfavorite

a_tocci 「いくらあったら生活していけるかという事を計算したそうですそれで9万円あれば生きられるという結果が出たそうです.この考え方って僕は凄く大事だと思っていて自分の生活費の最低ラインを知っておくと人間って凄く強くなるんですよね」 #bijp http://t.co/qpcp0oiejD 4年以上前 replyretweetfavorite