第1回】はじめましてのごあいさつ

フランスはブルゴーニュのジュブレ・シャンベルタン村でワイナリー(ルー・デュモン)を経営する日本人醸造家・仲田晃司さんはじめての連載。仲田さんのワインのラベルには「天・地・人」という文字がきざまれています。2003年5月、在りし日のアンリ・ジャイエ翁より「自分自身のアイデンティティをワインに表現せよ」との薫陶を受け、「日本人であるということ」「自然と人間に対する真摯な尊敬の念」の象徴として、「天・地・人」が生まれました。人気マンガ『神の雫』にも登場し話題となった仲田さんの日常やワインづくりを写真とともに紹介!

わたしのカーヴ、ルー・デュモンの正門からわたしのカーヴ、ルー・デュモンの正門から

はじめまして。仲田晃司と申します。
フランスはブルゴーニュ地方でワインづくりをしています。
これから、日々の出来事、海外での生活、フランスでの起業、ワインづくりなどを通じて、少しでもワインに、ブルゴーニュに興味をもっていただけたらと思います。

私は家内と一緒に、2000年7月7日にワイン会社を設立しました。
会社といっても4畳半のオフィスを借り、古道具屋で買ってきた机をひとつ置いただけの簡単なものでした。
私の親が事業に失敗して家族もバラバラになったことがあり、そのせいか、私自身が会社の設立をするなどとは夢にも思いませんでした。

正門にとりつけた表札正門にとりつけた表札

会社名はルー・デュモン(LOU DUMONT)といいます。会社設立時に手伝っていただいた友人の娘の名前をいただき「ルー」と名づけました。
また、私の出身地は岡山県の高梁市というところで、その街の象徴でもある備中松山城のあるお城山をイメージして「山」という意味の「デュモン」を使用し、これが私たちの会社名になりました。

私たちは、ワインをフランスで販売すること、そして海外で販売することも視野に入れていたため、日本名である「仲田晃司」という名前の会社では、各市場で問題が出てくるのではと考え、フランス語の名前をつけました。

ルモンタージュという方法で、タンクの下部から液体の醪を抜いてポンプで上から散布する作業ですルモンタージュという方法で、タンクの下部から液体の醪を抜いてポンプで上から散布する作業です

仕事は、ワインをつくり販売すること。
「LOU DEUMONT」は、私と家内、そしてフランス人の従業員2人の合計4人の会社です。
ぶどうまたはジュース、ワインを購入して、自分たちのカーヴ(蔵)で醸造します。そこで熟成させた後、瓶詰めをしてラベル貼りをして、フランス国内や、現在は13か国で販売しています。

よく聞かれることのひとつに、ぶどう畑を所有されているのですか? というものがあります。
ワインの製造といえば、ぶどう畑でぶどうをつくり、しぼって樽に入れ、アルコール発酵させたあと、滓引きをして、数か月から数年間熟成させて瓶詰めするというのが一般的です。
ですが、私たちは、ぶどう畑をもっていませんので、先述したように、ぶどうかぶどうジュースを購入してから、ワインづくりをはじめます。

カーヴの中。樽の数は100くらいですカーヴの中。樽の数は100くらいです

ぶどう畑を所有することは、ワインづくりをする人なら誰もが望む夢です。

しかし、現在の土地高騰により、特級畑では1万㎡(100m x 100m)で平均3億円程度の値がついています。
私たちの住むジュヴレイ・シャンベルタン村の村名のワインの畑であっても、5000万円(SAFER資料より)の価格がついている現状では、本当に難しいことなのです。

参考までに、私たちの村の中でいちばん高い畑は、特級の「Chambertin(シャンベルタン)」ですが、現在では、1万㎡(100m ×100m)で、なんと6億2千万円(SAFER資料より)の値がついています。
たとえば、1万㎡の土地を持っていたとすると、そこから約5000本のワインをつくることができます。
それを、村名ワインの平均価格である約18euro(1800円程度)で売ることを考えると、けして採算がとれるものではありません。

そして、何よりも難しいのは、畑の購入の仕組みが複雑であること。たとえお金があったとしても、思うように畑が買えるものでもないんです。
またいつか、畑の売買についてご説明させていただきます。

世界一有名なブドウ畑を馬で耕作中世界一有名なブドウ畑を馬で耕作中

会社をはじめた当時は、もちろん顧客はゼロでした。

家内と私の、ワイン製造家としての仕事のはじまりは、どのように顧客を開拓しようかと考えることでした。
そこで出した結論は「日本人ということを前面に出さず、ルー・デュモンとして、フランスのワインガイドに載れば、おのずと道は開けるのではないか」という、今思えば成り行きまかせの安易な考えでした。

はじめて載ったワインガイドは『Le Guide Hachette des Vins』というものでした。
ガイドを手にしたとき、家内の前では平静を装っていましたが、はじめて認められた気がして、実は本当に嬉しかったことを覚えています。その夜、載ったワインで家内と乾杯をしたのはいい思い出です。

嬉しいことに、ガイドに掲載されてからいろいろと問い合わせが来るようになりました。
ただ分かったことは、ガイドを見て問い合わせをくださった方たちは、掲載されたワインにしか興味がないということでした。
そのワインの生産量は300本で、嬉しいことにあっという間に売れたのですが、その後に問い合わせをもらうたび、売り切れを告げると「他のものには興味がない」と言われてしまい、とても残念に思いました。
その年は特に、自信作がたくさんあったので尚更でした。

その後もフランスのいろいろなワインガイドに掲載され、少しずつ個人客が増えてくるようになりました。また、それらのワインガイドのおかげで、フランス、アイルランド、韓国、台湾、もちろん日本も含め5か国での販売にこぎつけることができました。

LOU DEUMONTのボトル。「天・地・人」という言葉が入っていますLOU DEUMONTのボトル。「天・地・人」という言葉が入っています

日本では『リアルワインガイド』という著名なワイン雑誌に掲載され、急激に輸出量が増えることになりました。
その掲載された雑誌を両親や祖母に送ったところ、ほめられたことが嬉しかったですね。私は小さいころから人にほめられたことがほとんどなく、この年になってほめられるとどのようなリアクションをすればよいのか本当に戸惑います。でも、これはありがたい悩みですね。

これはまた詳しく書くことにしますが、その後『神の雫』(原作:亜樹直、作画:オキモト・シュウ/講談社)という漫画に掲載され、この漫画はいろいろな国で社会現象にもなったことから、そのおかげで一気に海外の門戸が開き、いろいろな国への輸出が広がっていきました。

この漫画に登場させていただいたことで、本当に嬉しかったことがあります。
実は、ここだけの話ですがフランスのガイドの大半は、お金を払って掲載していただくことが多いのです。

そうでないものも、サンプルは送付しなくてはいけません。それが主流なのですから、それは仕方ないことです。
でも、『リアルワインガイド』も『神の雫』も、私達がサンプルを送ったのではなく、お買い上げいただき、試飲されて、選んでいただいた。
それは、当時の私達の自信にもなり、本当に嬉しいことでした。

『神の雫』に掲載されたことは、発売日の当日に、私達の輸入代理店よりメールで知らされました。
この時ばかりは平静を装えず、飛び上がって喜んだのを、よく覚えています。

はじめてなもので、原稿を書くのに緊張しています。
今日は、ここまでにします。また次回、お会いしましょう。

ケイクス

この連載について

ワイン通信・ブルゴーニュの村から

仲田晃司

フランスはブルゴーニュのジュブレ・シャンベルタン村でワイナリーを経営する日本人醸造家・仲田晃司さんはじめての連載。仲田さんのワインのラベルには「天・地・人」という文字がきざまれています。2003年5月、在りし日のアンリ・ジャイエ翁より...もっと読む

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