男女の抱える十字架を“ストリート感覚”で語る?! 

2013年『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』(ポプラ社)を出版した、“未婚のプロ”ことジェーン・スーさん。タイトル通り、自分がプロポーズされない理由を恥を忍んで(?)101もリストアップした本書は、未婚の女性への警告書なのか、応援本なのか。女性が抱える恋愛&結婚の悩みを掘り下げるうちに見えてきた、“社会における男女”について鋭く分析していただきました。

ジェーン・スーがいま輝いている3つの理由

“未婚のプロ”第1号!
「負け犬」などのネガティブな言葉で語られがちだった、未婚女性である自分のことを、「未婚のプロ」と前向きで力強い言葉で名乗った、記念すべき第一号。

自虐ネタなのにイタくない!
著書もラジオでのトークも、未婚生活についての自虐ネタが多いが、人生を心から楽しんでいるのがわかるのでイタくなく、聞いているこちらも前向きな気分に。

未婚、既婚、女、そして男までも共感できる!
著書『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』は、未婚女性のみならず、既婚者や男性までも「うんうん」とうなずいて人に話したくなる内容ばかり。

男性だって“十字架”を背負っていた

— 人を分析したり、観察したりするのは、もともとお好きなんですか?

ジェーン・スー(以下、スー) 一緒にいる人に「頼んでないのに、勝手に分析するな」とはよく言われます。私は普通に話しているだけで、分析しているつもりはないんですけどね。

— 『わたプロ』を読んでいて感じたのは、そうした観察眼は、いろいろと周りから相談を受けるなかで磨かれたのかな、ということでした。
※『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』の愛称

スー こちらから根掘り葉掘りは聞きませんが、けっこう相談されるかもしれません。話を聞いてほしいっていう人の話を聞くのは好きですね。

— 女子高・女子大ご出身だそうですが、そのときの環境は、今の性格などに大きく影響を与えていますか?

スー 大きいと言わざるを得ないなと、大人になってから思いました。女子高も女子大もすごく楽しいんですけど、日常生活に男性がいないぶん、男性の生態を知るのが遅くなりますね。だから世の中をうまく渡りたいなら、共学のほうが絶対にいいと思います(笑)。性差を日常から学習できるから。
 私は、社会に出てから、話が通じなかったり、女性の武器的なものでコロリと騙される男性を見てがっかりしたことがたくさんあったんですが、共学で育てば違ったのではないかと。とはいえ、男と女では働き方が違うというか、私たちが背負っていない十字架を男性は背負っているのだということを、ここ数年でようやく私もわかったんです。

— 十字架、ですか。

スー 上司に食ってかかったり、やりたいことを押し通そうとして無茶を言うようなことを、少なくとも私ができたのは、いつだって辞めてやるよっていう気概を持てたからだと思うんです。

— 男性は女性に比べて、仕事を失うことへのプレッシャーは大きそうです。

スー 女性がそこまで会社に期待されていない悲しい現実と、背中合わせのことでもあるとは思うのですが。たとえば私が35歳で「スペインに1年留学してきます」と言って会社を辞めたとしても、「バイタリティがあるね! 楽しそうだね、がんばって行っておいで!」と送り出されるだろうし、帰ってきてからも、その経験を活かして何かしら新しい仕事ができると思うんです。
 35歳で労働を一時中断したことを、周囲から後ろめたく思わされることは少ないでしょう。だけど35歳の男性が同じことをしようものなら、会社から留学に送り込まれるのでもない限り「あいつは出世街道から落ちたな」とみなされてドロップアウト感が出ますよね。

— 言われてみれば、そう感じてしまうかもしれません。

スー それってつまり、男の人は一度会社に入ったら、65歳くらいまで働き続けることがいまだに美徳とされていて、彼らの幸せの形にはその一択しかないのかもしれないと思いました。
 私が会社員だった時代、男性の上司と部下が、重大なミスを穏便に済ませようとする光景をたくさん見たのですが、そうした状況を考えると当然の話ですよね。彼らはできるだけ長く、うまくやって働く場に居続けなければならない。だとしたら、お互いを吊るしあげるようなことはしないよな、と。

— たしかにそうですね。

男女関係を“ストリート感覚”で語る?! 

スー 女性には仕事を続ける続けない、結婚するしない、子どもを産む産まない、それぞれの組み合わせで選択肢が多数ありますけど、男性には、一度働き始めたら、仕事をし続けて稼ぐという選択だけが期待されているように見受けられます。現実には非正規雇用が増えて、食べていくのも精いっぱいという人が増えているのに。
 社会通念として、「男だったら、やりがいのある仕事で十分稼ぐ」という美徳が未だに残っている。現実には、この先もっともっと男性のあり方は多様化していくと思います。そこで男の多様性を自分たちで認めていかないと、女性と同じ居心地の悪さを味わうよって、年下の男性にはよく言っています。

— 多様性は、男女共通の課題ということですね。

スー 今後はまじめに働いているのに家族を養えないとか、マンションや車を買えないとか、同じ会社に一生勤めたりできない男性がさらに出てくるはず。親の世代の男たちが当たり前にできていたことが、できなくなっていく。そのなかで、多様性の容認を自分たちできちんとやっていかないと、男性はキツいでしょうし、もちろん女性も、自分たちだけでなく男性たちの多様性を認めていったほうがいいと思います。

— 男性には男性の、深くて暗い森があるんですね。

スー 本を発売してからの反響を受けて辿り着いたのは、今のところそこなんです。いやー、こんなことやってたらプロポーズされないよ、わっはっは!と自分たちを笑っていたけれど、どうやら自分たちが不遜なせいだけでもなさそうだと。
 男の人には男の人の十字架があるんですね。だけど私はそれをジェンダー論などに落とし込む知識を持ち合わせていないので、もうちょっとおもしろおかしく、ストリート感覚で語っていければいいかなと。

— ストリート感覚ですか(笑)。

スー これは学問なんかじゃねえ! インディーズであり、ストリートで養った感覚だ!っていう(笑)。

— でもだからこそ、思いがけないところにたどりつけた感じもありますね。

スー これからは「俺は一般職のほうがいい」という男性が出てきて当然だと思いますし、今までその選択肢がなかったこと自体が不思議。誰もが出世したいわけじゃないですしね。相当時間はかかるでしょうけど、いろんなルールが変わってくると思います。

(次回、4月3日更新予定)

執筆:兵藤育子、撮影:片村文人


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私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな (一般書)
私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな (一般書)

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この連載について

イマ輝いているひと、ジェーン・スー「わたしが“未婚のプロ”を名乗ったら」

ジェーン・スー

2013年『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』(ポプラ社)を出版した、“未婚のプロ”ことジェーン・スーさん。タイトル通り、自分がプロポーズされない理由を恥を忍んで(?)101もリストアップした本書は、未婚の女...もっと読む

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コメント

MacsoMacson 「社会通念として、「男だったら、やりがいのある仕事で十分稼ぐ」という美徳が未だに残っている。現実には、この先もっともっと男性のあり方は多様化していくと思います。」ジェーン・スーさん https://t.co/fch8mtG5bF 2年以上前 replyretweetfavorite

hirarisa_R ジェーン・スーさんが講談社エッセイ賞受賞されたのか!!!前に取材させていただいた記事、無料で読めます。 |イマ輝いているひと、ジェーン・スー https://t.co/0ET1ECBAQ0 約3年前 replyretweetfavorite

restart98037145 「俺は一般職のほうがいい」感覚、同意。 約4年前 replyretweetfavorite

k40r1 ちょっと前の記事だけど。ストリート・ワイズ! 4年以上前 replyretweetfavorite