魔法のおもちゃ
中学生時代にも「時間を掛ければ抜きん出ることができる」と実感する機会がありました。
「ハヤト、欲しいもんあるのか? 入学祝いになんか買ってやるぞ」
中学に進学したある日、父が、突然こう言い出しました。ぼくは迷わず、「パソコンがほしい!」と答えます。
時は1999年、インターネットの黎明期。いたるところで「インターネットが社会を変える」といわれていた時代でしたから、ぼくはパソコンに興味津々だったのです。
父に買ってもらったのは、NEC製のデスクトップパソコン。価格は20万近かったはずですが、父の会社の景気がよかったためか、特段の説得の必要もなく、「よし! 買ってやる!」とインターネット回線とセットでプレゼントしてくれたのです。念願のパソコンが家に届いた時、「これで世界中の人とつながることができるんだ」と感慨にふけりました。
パソコンを手に入れて、ぼくは真っ先に無料でホームページを作成できる「ジオシティーズ」を利用し、自分のサイトをつくりました。当時はネット上に自分の場所を持つということが、大変にクールなことだったのです。
そこからは、ありあまる青春の時間を「サイト運営」に費やすことになりました。
様々なサイトを、情熱に任せてつくりました。
ジャンルは多岐に及び、笑える文章を投稿する「テキストサイト」、自作のフォントを配布する「フォントサイト」、画像素材を配布する「画像サイト」、父の会社のサイトもつくりましたし、中学校のサイトも勝手につくってしまった記憶があります。
数だけでいえば、パソコンを買い与えられてから1~2年で30個はサイトを立ち上げたはずです。
ホームページを制作するスキルは、独学で学びました。なんせ時間があったので、一日4~5時間はその勉強に費やしていました。分厚いHTML(*1)のタグ辞典を親に買ってもらい、それを参考にしながらひとつひとつコードを打ちこみ、真っ白なキャンバスに絵を描くようにパーツを配置していきました。
その「作品」は、世界中のどこからでも見ることができるのです。インターネットは、あのころのぼくにとって魔法のように時間を忘れて没頭できる「遊び」でした。
(*1)HTML……HyperText Markup Language(ハイパーテキスト・マークアップ・ランゲージ)の略。ウェブページの記述や構築をするための最も有名なコンピュータ言語(=マークアップ言語)の一つ。
個人ニュースサイト
そうして夢中になってサイトをつくっていくなかで、ホームラン級にヒットしたのが「個人ニュースサイト」でした。