黑田菜月展「けはいをひめてる」—日常を未知の光景に変える“光”

子どもの持つ無邪気さや瑞々しさを捉えた作品で注目を集める写真家・黑田菜月。人を撮ることを真摯に追求しつづけてきた彼女が、初の個展「けはいをひめてる」(銀座ガーディアン・ガーデン)を催しました。あたりまえの風景を神秘的なものに変えてしまう彼女の写真には、あの大画家クロード・モネの《睡蓮》に通じる魅力があります。写真がとらえた光や水面の表情に込められた、言葉にならないメッセージを楽しみましょう。

寒さが続きますね。でも、先日はたった一日だけ、季節を先取りしたような陽気が訪れました。暖かさに誘われるまま銀座の街を歩くと、「ガーディアン・ガーデン」というギャラリーの入口が現れます。ここで開かれていたのは、写真の展覧会。黑田菜月の「けはいをひめてる」です。

入口から全体をすぐ見渡せるささやかなスペース。壁面に、大小いくつもの写真作品が掛かります。郊外の緑地に生い茂る植物へとカメラを向けたり、思い思いに過ごす人の様子を撮ってみたり。子どもの姿も、あちらこちらに出てきますよ。変哲のない町角にたたずみ宙に視線をさ迷わせ、おとなのわたくしたちには見えない何かと交信しているかのよう。そういえばたしかに、子どもはよくこんな表情をするものです。

写っているのは身近な場所や人ばかり。それでも、ここにはひとつとして、ありきたりなものがない。どこにもありそうなのに、いやいや、これは見たことがないと強く思わせる写真。いったいどうしたことなのでしょうね。

ひとつ考えられるのは、画面のなかの光が独特だから、何気ないシーンがかけがえのないものに見えるということ。写真はすべて戸外で撮られていて、画面の隅々までたっぷりと光に満ちています。肌を刺すほど強烈じゃないけれど、全体を照らすには過不足ない光量。ここにいたら柔らかい光のシャワーを浴びるみたいで心地いいのだろうと想像させます。

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アート・コンシェルジュからの便り

山内宏泰

世に“アート・コンシェルジュ”を名乗る人物がいることを、ご存じでしょうか。アートのことはよく知らないけれどアートをもっと楽しんでみたい、という人のために、わかりやすい解説でアートの世界へ誘ってくれる、アート鑑賞のプロフェッショナルです...もっと読む

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_k18 今週はリクルートのガーディアン・ガーデンで開催中の黑田菜月展です 4年以上前 replyretweetfavorite