寒さが続きますね。でも、先日はたった一日だけ、季節を先取りしたような陽気が訪れました。暖かさに誘われるまま銀座の街を歩くと、「ガーディアン・ガーデン」というギャラリーの入口が現れます。ここで開かれていたのは、写真の展覧会。黑田菜月の「けはいをひめてる」です。
入口から全体をすぐ見渡せるささやかなスペース。壁面に、大小いくつもの写真作品が掛かります。郊外の緑地に生い茂る植物へとカメラを向けたり、思い思いに過ごす人の様子を撮ってみたり。子どもの姿も、あちらこちらに出てきますよ。変哲のない町角にたたずみ宙に視線をさ迷わせ、おとなのわたくしたちには見えない何かと交信しているかのよう。そういえばたしかに、子どもはよくこんな表情をするものです。
写っているのは身近な場所や人ばかり。それでも、ここにはひとつとして、ありきたりなものがない。どこにもありそうなのに、いやいや、これは見たことがないと強く思わせる写真。いったいどうしたことなのでしょうね。
ひとつ考えられるのは、画面のなかの光が独特だから、何気ないシーンがかけがえのないものに見えるということ。写真はすべて戸外で撮られていて、画面の隅々までたっぷりと光に満ちています。肌を刺すほど強烈じゃないけれど、全体を照らすには過不足ない光量。ここにいたら柔らかい光のシャワーを浴びるみたいで心地いいのだろうと想像させます。
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