「スマートフォンって、いわばT型フォードだと思うんです」
iPhoneアプリの開発講座「レインボーアップス」を運営するジークラウドの渡部薫代表は言う。1908年に米フォード・モーターが発売した大衆車「T型フォード」は、20世紀に花開いたモータリゼーションの起点となった歴史的名車だ。
「T型フォードのおかげで、今の社会のプラットフォームができた。道路が整備され、ドライブスルーや郊外型の消費などライフスタイルの変化が起きた。車自体の進化もさることながら、100年後の車社会の様子と、それに基づくさまざまな産業の誕生は、さすがのフォードも想像できなかったはず」というのが渡部代表の持論だ。
iPhoneをはじめとするスマートフォンとそこから生まれるサービスが、これからの社会にどんな変革を生み出すか、誰も正確には想像できない。だが明らかなことは、産業構造がソフトウエアに移行する中で、そこでの共通言語となるプログラミング言語の習得は大きな武器になるということである。渡部代表がレインボーアップスを始めた理由はそこにある。
アップルの戦略として画期的なのは、アプリ開発を全面的に外部に委ねたことだろう。iPhoneアプリの配信サイトである「アップストア」は、2008年7月に500個のアプリでスタートしたが、今年7月時点でアプリ数は65万本、これまでの累計ダウンロード数は300億本を超える。開発者は個人法人合わせて全世界で20万人おり、全売り上げからアップルが30%の手数料を取った後、5億ドル超が開発者に支払われている。
1カ月に400万円!
現代のシンデレラ物語
前述のレインボーアップスの受講生は社会人が中心で、これまで1700人の開発者を生み出した。まったくの初心者でも、全10回の講義で10個のアプリを作れる。
卒業生の一人、佐藤宏亮さん(50歳)が開発したのは「カロリー管理」というアプリ。摂取カロリーや運動による消費カロリー、体重などを記録するもので、3000を超える食事メニューや、外食チェーン69店のメニューを網羅している。
佐藤さんは、30代のころにゲームソフト会社のタイトーでファミコンソフトの企画をしていたが、プログラミングの経験はなかった。講座で知り合った仲間3人で、佐藤さんがかねて温めていた企画である「カロリー管理」アプリを半年かけて開発した。
10年7月のリリース後、特別なプロモーションもしなかったが、いきなり有料アプリの総合1位を獲得。これまでにダウンロード数は5万を超える。最も売れたときには、月400万円の収入があった。トータルでも1000万円は軽く超えているという。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。