前編】一度知ったら引き返せない「嫌われる勇気」の魔力

「自由とは他者から嫌われることである」——フロイト、ユングと並んで「心理学の三大巨頭」と称されるアドラーの思想が学べる書籍『嫌われる勇気』(岸見一郎・古賀史健著、ダイヤモンド社)。cakesでの同名連載をまとめた本書の刊行を記念し、著者の一人である京都在住の哲学者・岸見一郎さんと、起業家・コラムニストの安藤美冬さんのSkype対談が実現。本書を「2013年に読んだ本No.1」と公言する安藤さん。すでに「自由」を謳歌しているように思える彼女は、アドラーの思想の何に衝撃を受けたのでしょうか?(構成:宮崎智之)

トラウマを作っているのは現在の自分?

安藤美冬(以下、安藤) 昨年末にニューヨークに行く用事がありまして、飛行機の中で『嫌われる勇気』を読みました。一口で言うと「開眼」したというか。「ただごとではないことが起こっているぞ」という直感に導かれるまま、ホテルにチェックインした後にもう一度再読し、結局1日に2回も読んでしまいました。


岸見一郎(以下、岸見) なんと、ありがとうございます。

安藤 2回目の読書を終えた直後のことです。本を閉じ、余韻を感じながらゆっくりと顔を上げると、目の前にニューヨークのホテルから見える朝焼けが広がっていました。それがもう、ものすごく綺麗で。自分の心にも光が広がっていくような、シンクロする感覚がありました。それほど影響を受けた特別な一冊だったので、先生とお話しするのを楽しみにしていました。

岸見 私も『僕たちはこうして仕事を面白くする』(NHK出版)で安藤さんを知って興味を持ち、他の著書を読み進めていたところだったので、今日をとても楽しみにしていました。安藤さんの発言はすごく面白いですね。

安藤 本当ですか! ありがとうございます。

岸見 安藤さんは、『嫌われる勇気』のどこを気に入ってくださったのでしょうか。

安藤 今はまったく違う分野を行き来していますが、本当のところ、私が子どもの頃からいちばん興味のある分野は、「心の探究」なんです。物心ついた頃から「人はどうすれば苦しみから逃れ、幸せを感じられるのか」という大きなテーマを考えずにはいられませんでした。小学校時代にいじめられたり、高校時代に親友が心の病気を発症したり、26歳で「抑うつ」と診断されて休職をしたりしたことが理由だと思います。「心」というつかみどころのないもの、それを理解しようと、たくさんの心関係の本を読んだり、何十カ国を旅したりしてきました。

岸見 具体的に行動を起こされるところが、安藤さんらしいですね。

安藤 そうしたなかで私がぶち当たった最大の疑問は、「トラウマはどうしたら克服できるのか」ということでした。なぜかというと、心のトラウマというものは厄介な代物で、探求すればするほど収拾がつかなくなるからです。トラウマを解決しようにも、次から次へと泉のようにわき出してきてキリがない。ひとつ癒せばまた別のトラウマが姿を現し、それをまた癒し……。それに対して、『嫌われる勇気』は明確にトラウマの存在を否定しています。その言い切りっぷりに、すごくスッキリしたんです。

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この連載について

自由に生きるための武器・アドラー心理学—岸見一郎×安藤美冬対談

安藤美冬 /岸見一郎

「自由とは他者から嫌われることである」——フロイト、ユングと並んで「心理学の三大巨頭」と称されるアドラーの思想が、哲人と青年の対話を通して学べる書籍『嫌われる勇気』(岸見一郎・古賀史健著、ダイヤモンド社)。cakesでの連載をまとめた...もっと読む

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コメント

hinata_honjo こんなんあったんだなあ。◆ 4年以上前 replyretweetfavorite

wada_makoto_ ほんとにすごい本だった。/ 4年以上前 replyretweetfavorite

7_fuka 「自己肯定」ではなく「自己受容」。そう、死にたいミュージカルですっきりするのは、肯定ではなく受容だからだと思うんだよね。| 4年以上前 replyretweetfavorite

RIME3726 ”本当は「仕事ができないから転職して逃げる」などと他人に否定されることが耐えられなかったり、「その仕事に向いていない自分」を受け入れることができないから、噓の理由を言って、自分自身を納得させたいだけなのです。|cakes(ケイクス) https://t.co/aOwO0QclmQ 4年以上前 replyretweetfavorite