徳永準[16:41]
ぼくが何もかも忘れてその場に倒れる──はずの、その寸前。
「うわっ!?」
ぼくの体は、ふわりと宙に浮く。
オサリバン・愛[16:41]
──思わず叫んだんは、
「本日二十四時四〇分から、生放送!」
っていう、おっそろしくマヌケな一言だったんですけど、それさえも徳永少年の、
「うわっ──!」
ていう悲鳴と、ヤンキー連中の相変わらずの、
「いたぞ! つかまえろ! どこの団だこらてめえ!」
みたいのと、あとはバイク軍団の爆音でかき消されちゃった。とほほ。
爆走トラック野郎並みの凄い勢いで突っ込んできて、あわれ徳永少年むんずと肩をつかまれて、タクシーの前に停車してた黒いバンに積み込まれて。ヤンキーのみなさんもゲームのゾンビ軍団みたいに襲ってきて、美園さんが「ぎゃー」みたいな大声あげて、そういえばもう一人誰かが、徳永少年を追っかけてバンの中へ跳びこんだような気もするけど、はっきりとは見えなかった。もう、ほんと何がなんだか。爆音、悲鳴、やんのかこら、うっせー邪魔すんな、そんでもって少年入りのバンが急発進、赤黒い夕焼けの彼方へピュ〜!…… って言葉で説明すると長いけど、でもほんとのところは一瞬の出来事で、何おきてんのか判らんかったんよね。なんか、稲妻がビカーッて光ったみたい。
で、そのすぐ後にパトカーのサイレンの音が聞こえてきて、したら今度はヤンキーなみなさんも真っ黒クロスケが逃げるみたいにぱーって走り去って。
「マナちゃん、時間ないってば!」
え? え? え? なんで? どうして? 何がどーなってんの? あのバイク男、誰? 迷彩軍団は? なんでヤンキーさんが徳永少年を追っかけてたの? 彼、どこ連れてかれちゃったの!? 教えて神田明神さま!
「マナちゃんっっ!!!!」
「はいいいっ!」
藤堂真澄[13:09−16:42]
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